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はてなキーワード: はやけとは

2025-11-17

シェービング入門

必要もの

両刃カミソリホルダー

替刃

泡立てブラシ

味噌汁の碗 泡立てボウルとして

せっけん グリセリンが成分表に書かれていると手に取ってしま

ボディソープまたはシャンプー うるおい成分があるとよいでしょう 

納豆パック 洗い、ふたを開いた状態で裏返してカミソリスタンド、刃の保管場所として

クボロックアイスカップ 底面とフチの一部穴をあけてひっくり返しブラシスタンドに ハサミを熱する場合はやけどに注意

スコッティペーパーふきん さっとさっと 半分にして濡れタオル代わりに、ふきあげ時のタオル代わりに万能、清潔

メンソレータム ミョウバン代わりにはならないものの保湿

シェービングの方法

濡れタオルでひげや頭髪をむらし泡をつけて剃り洗い流し水分を取り保湿して片付ける

泡をつけて剃るのは3度までしてよいが泡と水分を切らさないことを心がける、1度目は毛の流れにそって行い、それを守れば2度目3度目は好きにしてよい

タオルがない場合は上にあげたもので工夫して行う

2025-11-13

anond:20251027152024

複垢フェミに関する説明だけはやけに詳しく書かれているものの、それ以外のやべーやつはコピペで済ませるだけのお粗末な代物で、あまつさえ引退宣言をしたやべーやつをそのまま番付に据え置きするほどの低クオリティ番付表だった。

やべーやつに関心の薄いブクマカクオリティの低さを指摘することはなかったものの、トラバでは非難が続出した。

それまでの番付ほとんどが前回のコピペだったし、それほど気にならなかったけどな。

トラバでは非難が続出」なんてのも一人でできる話だし。

そこまで番付品質にこだわるのなら、ご自分が高品質もの作成してみればよいかと。

2025-11-10

50代で孤独で、クソみたいな生活をしている。

悪夢を見た。事故死か自殺か、とにかく死んでしまっていて、死後の世界にいた。

そこで「ここが死後の世界です。もう二度と戻れません。でも悪くない場所ですよ」と説明を受ける。

地獄でも天国でもない、ただ平坦な日々が続くような場所だった。

でも、そこでふと「戻りたい」と思った。

もう少し、生きて、苦しみたかった。

その瞬間に目が覚めた。

夢なんてすぐに細部を忘れるのに、これはやけに印象に残った

2025-11-02

[]

ファイナルファンタジータクティクス イヴァリースクロニクルズをクリアした。

エンハンスド版。スタンダードディープダンジョンも含めて全部やった。

プレイ時間は100時間ぐらい。多少の物足りなさはあるけどPSのやつ+αという感じでとても良かった。

ストーリー面はPS版と同じだけど、ルカヴィが怪物というよりも人間臭くなった感じが主な変更点かも。


変更点は痒いところに手が届く感じで概ね良かったと思う。


難易度スタンダードだけど高くはない。


気になる点というか、希望というか。


キャラ感想


ジョブ感想


ひとまず終わり。アプデで追加コンテンツ来るといいなあ。全体的に原作準拠の良いリメイクだったと思う。満足。

Lv.99まで上げたり、全ジョブマスターしたり、敵忍者の投げるから武器回収したりはしない。

2025-10-27

[]番付作者、番付を削除

2024年8月場所から2025年8月場所までが削除されている。

2024年3月場所までは残っているので、運営による削除ではなく投稿者自らによる削除と思われる。

2024年3月場所https://b.hatena.ne.jp/entry/s/anond.hatelabo.jp/20240331214734存続
2024年8月場所https://b.hatena.ne.jp/entry/s/anond.hatelabo.jp/20240805060611削除
2024年12月場所https://b.hatena.ne.jp/entry/s/anond.hatelabo.jp/20241202230804削除
2025年4月場所https://b.hatena.ne.jp/entry/s/anond.hatelabo.jp/20250410005723削除
2025年8月場所https://b.hatena.ne.jp/entry/s/anond.hatelabo.jp/20250830224307削除

リンク先を列挙したらなぜか投稿できなかったので、ブクマエントリーURLを列挙した

2024年8月場所以降からは別人(二代目?三代目?)が投稿していたようだが、著しくクオリティが低い番付表だった。

複垢フェミに関する説明だけはやけに詳しく書かれているものの、それ以外のやべーやつはコピペで済ませるだけのお粗末な代物で、あまつさえ引退宣言をしたやべーやつをそのまま番付に据え置きするほどの低クオリティ番付表だった。

やべーやつに関心の薄いブクマカがクオリティの低さを指摘することはなかったものの、トラバでは非難が続出した。

そうした非難精神的に耐えられなくなった勧進元番付作者)は番付表をひっそりと削除したものと思われる。

たとえ低クオリティでも過去番付表を削除せずに残していれば、別の有志がまた番付作成を引き継ぐ可能性もあっただろうけど、削除されたからにはやべーやつ番付継続は困難になったと言わざるをえない。

2025-10-13

☆X(旧Twitter)で触れない方がいい話題&近寄らない方がいい人☆

全て主観です

Twitter(もうめんどくさいのでTwitter統一)歴10年による、初心者が触れない方がいいやつ一覧です。その界隈に行く目的Twitterを始めた人などは当然除きますが、よくわからない人は参考にしてください。

話題

政治

定番です。右だろうが左だろうが真ん中だろうが触れない方がいいです。フォロワーが少しでも政治に触れた時点でフォロー外す、って人も多いので政治垢でもない限り百害あって一利なしです。

「あの法案話題だな~」でもワンチャンブロックされます。「選挙行ってきた~」がギリです。どこに入れたか言ったら当然即死です。

宗教

定番2です。話されても会話に困る、というのが一番の理由ですが、もう一つの理由としてTwitter民(というか最近日本人?)はやけ宗教に厳しいです。「真面目に神に祈るなんてアホくさw」「教えを守るなんて馬鹿馬鹿かしい」みたいな宗教冷笑民が一定層いますあなたが何かしらの宗教に属しているなら、なおさら触れない方がいいでしょう。無宗教でも触れない方が無難です。

ジェンダー

禁忌です。絶対に触れてはいけません。ここで言うジェンダーとは、LGBTQ、女性差別男性差別を指します。この辺は振れた瞬間に別の何かの勢力を敵に回すことになります。最悪ですね。

というか、「○○差別」みたいな話題Twitterでは全部触れない方がいいです。高確率でめんどくさい人に巻き込まれます。そしてこういう話をすると「差別問題を見て見ぬふりをしている人も差別主義者」というトンデモ理論を展開する人がいるんですが、無視でいいです。我々は差別問題に一石を投じるためにTwitterをしているわけではないのですから

ゴシップ

内容が下賤すぎて情操教育上良くないのもありますが、最近は悪質なゴシップRTしたり肯定的意見を言った人も訴訟されることがあるらしいので、本当に害しかないです。ライブドアニュース辺りの情報源ががはっきりとしたニュースだけ触れましょう。

近寄らない方がいい人

前述の触れない方がいい話題の界隈の人

当然避けた方がいいです。

暴露

ゴシップと同じ理由最初ブロックを推奨します。間違えて触れたら大変です。

冷笑

最近流行りの奴です。自分の好きなことを冷笑されても精神衛生上悪いことしかないので、近寄らない方がいいです。そもそもかっこつけて「冷笑」って言ってますが、分かりやすく言えばは他人を小ばかにしてる嫌な人です。積極的に関わる理由がありません。

また、自虐気味に自コンテンツ冷笑するタイプもいます。こんなのと関わる必要も皆無なのでほっときましょう。

一部コンテンツにやけに攻撃的な人

一部コンテンツっていうのはVTuberとか撮り鉄とかその辺です。この人たちは「社会的に叩いていいコンテンツ」を見つけて叩くのが趣味な人たちです。つまり自分の好きなコンテンツが「叩いていいコンテンツ」とみなされた場合、矛先がこちらに向く危険性があります。先んじて自衛した方が無難でしょう。

ちなみに彼らの言い分として「こいつらは言われるだけのことをしてる」とかがありますが、自分が直接何かの被害を受けたわけでもないのによくわからない優越感で人を叩いてる時点であまりいい人たちではないと思います

アンチ

Twitterには一人の人だったりコンテンツだったりを叩くためだけの専用アカウントを作ってる人が結構ます。反対意見も取り入れるためだったり、はたまたただの好奇心だったりでこういうアカウントを見てしまいがちですが、絶対やめた方がいいです。元々悪い感情が無かったとしても、マイナス感情を見ていると必ずそちらに引っ張られます。最終的にあちら側になってもおかしく無いです。なるべく楽しい情報だけ見ていきましょう。

合わないと思った人

人間合う合わないがあります。合わない人と話すのはとても疲れることです。合わないと思ったら潔く切るのも手だと思います推しだけどTwitterの使い方がどうしても合わない、とかもあると思います。その場合も無理せず、自分の楽しめる範囲フォロー欄を構築しましょう。所詮Twitterなのですから



良きTwitterライフを。

2025-09-30

anond:20250930171603

やけんモテないと思う!やけんモテないと思う!やけんモテないと思う!チー牛はやけモテないと思う!

2025-09-29

anond:20250929231128

そんなことばっか言ってるからチー牛はやけモテないと思う

2025-09-18

俺がいじめ加害者扱いされてる事が未だに納得いかないけど

俺……いじめられてた

山田……俺の友達

川島……いじめられてた

鈴木……山田友達。のちに川島とも家族ぐるみで仲が良い事を知る



卒業後、数少ない友達山田と会って何度か飯を食べに行ったんだが

山田鈴木とも仲が良く、たまに会ってるらしい。

んで

ある日、飯屋で山田が言いにくそうに「いや俺は、そんな事ないと思うけど…って否定したんだけどさ」と話し始めて

俺は驚いた。

川島いじめていたのは俺で、色々な酷い事を川島にしていた』と鈴木が言っていた、という。

俺は即否定した。

「いや俺そんな事してないし! てか俺もいじめられてたんだが…!」

山田は「だよなぁ」と、少しホッとした顔を見せた。


え?

俺が川島を? なんで鈴木はそういう認識なの? 俺も、川島も、いじめられてた側なのに……

疑問が渦巻く中、一つ腑に落ちた。


山田からその話を聞く2か月前に、

俺、山田鈴木、●●、▲▲、■■の6人がたまたま会って話す機会があったのだが

その場で鈴木はやけに俺には塩対応というか、俺とは話したくないオーラを出していたな、と。

LINEも交換しなかったし。

元々、仲良しというわけでもないかほとんど気にしなかったが、

そうか、俺を川島いじめ加害者認識してたら……そら話したくないわな〜、と。


いじめてないのにな。

そんでタイトルの通り、

俺がいじめ加害者扱いされてる事が未だに納得いかないけど、

バガボンド』の武蔵台詞を思い出して気にしない事にした。


    まあいいか

    俺の中の真実があれば

2025-08-28

1999年7の月 アンゴルモア、恐怖の大王存在した

今年の夏、数年ぶりに実家帰省したんだけど久々に帰ったせいでこの機会を逃すまい!と親から部屋の片づけを命じられ、ゆっくりするつもりが全然出来なかった。

仕方がなく実家自分の部屋の掃除をしたわけだけど…机の引き出しから何やらよからもの発見原稿用紙数枚分。なんとなく思い出した。自分が確か高一の時ぐらいに書いた小説もどき…。

そのまま処分しようかと思ったけど、これも何かの縁かと思い、焼き払う前にここに残そうと思って(供養の意味も込めて)、恥ずかしながら当時書いた小説をここに貼ります

1999年7の月 アンゴルモア、恐怖の大王存在した』

1

七月の黒板って、手のひらの汗を全部吸って、授業が終わるころにはチョークが湿気で太る。

セミは朝からミンミン鳴くくせに、ホームルームときだけ少し黙る。

うちの担任は「ノストラダムスの書いた七の月だね」と、冗談のつもりで言うのだけれど、冗談って二回目から効かなくなるのよ、先生私たち1999年の夏を、テレビワイドショーと同じ顔で消化して、笑うところは笑って、でも笑いきれない部分は教科書の下に隠す。

休み廊下のどこかでPHSがピピピって鳴る。あの音は少し未来っぽい。私は机の中からMDを取り出して、宇多田ヒカル再生して、再生の丸い矢印が自分心臓の形に似てるな、と毎回どうでもいいことを思う。(でもFirst Loveは毎回ぜんぜんどうでもよくない。あれは心音を増やす歌)

夏の空気扇風機の首ふりのリズムで揺れて、窓の外の雲は誰かが消しゴムで端をこすったみたいにほどけている。私は五時間目が終わったところで、ノートをぱたりと閉じて、裏表紙の端を折って、そっと立ち上がった。「保健室行ってきます」って小さく言えば、先生はたいてい止めない。保健室に行く経路で、屋上という寄り道があることは先生たちの知らない秘密地図

理科準備室の窓は鍵がゆるい。椅子を一脚ひっぱって、窓枠に膝を乗せ、指先で金具を押し上げる。屋上に出ると、空気が急にちゃんと味になる。すこし錆びた匂い。じんわりした熱。遠い国道トラックの音。フェンスの金網に両手をかけて、私は深呼吸を一回、二回。七月の呼吸。あ、これは覚えておこう、って思ったとき

「そこ、危ない」

声がした。男子の声。低すぎず、高すぎず、でも機械温度みたいに均一。

振り向く前に、軽く手首を引かれて、私は一歩だけ後ろへ下がる。フェンスぎりぎりのコンクリ、米粒くらいの黒い影が落ちて、コツン、と音を出して割れた。殻の匂い。卵じゃない。虫でもない。もっとイヤな、硫黄の、でもどこかで嗅いだことのある、夏の終わりの側溝みたいな。

「ほら」

私の手首を放した彼は、フェンスにもたれるように立っていた。うちの学校制服じゃない。黒い長袖。胸元に小さな紋。汗をかいていない。かわりに、視線が汗をかいているみたいに一直線。

「落ちてくるからね、ここ。今日はまだ小手調べだけど」

「……なにが?」私は聞く。

「アンゴルモア」

さらっと言わないでほしい。テレビが殊更に太いフォント見出しにしてた単語を、屋上の風のなかで日常語みたいに投げないでほしい。私は笑うタイミングを探したけれど見つからず、代わりにMDを一時停止にした。(宇多田のサビで止めるのは罪だけど、今日免除してほしい)

テレビのやつ?」

テレビが知ってるのは“名前”だけ」

彼はフェンスを見上げる。その目は、黒板のイコールをまっすぐに引ける人の目。

本体はまだ。今日は殻と匂いだけ。予告編みたいなもの

殻、と彼が言った瞬間、さっきの黒い米粒が、煙みたいにほどけて消えた。彼は胸の紋に指先を添え、短い金属を引き抜いて、空気を一回だけ切る。刃じゃない。音だけ。なのに。地面の黒が粉になって、風にさらわれた。

ちょっと」私はやっと声を持つ。「なにそれ。あなた誰」

通りすがり

教科書みたいな返事。でもふざけた感じはない。

「通りすがるには、ずいぶん正確にうちの屋上に来たじゃない」

「見える人のそばは、風が変わるから

彼はほんのすこしだけ笑う。笑い方は丁寧で、耳の形まで整っているタイプの顔。近づくと汗の匂いじゃなくて鉄の匂いがした。

「君、見えたでしょ、さっきの。普通の人は見えない。足もとに殻が落ちても、踏んで帰る」

「見えたから、何?」

「ひとりにしない」

その言い方は、なんだか“わたしの”言葉みたいで、ちょっとムカついた。知らない人に先に言われるの、好きじゃない。

名前は?」

「湊(みなと)」

ひらがなで言われてもカタカナで言われても、たぶんこの名前は港の音がする。波打ち際で人を呼ぶ声。

湊はフェンスの外を見上げる。雲が薄く切れて、青の下に白い面が一秒のぞく。その一秒のあいだに、空が低く唸った。電車が遠くの高架をゆっくり渡るときの音に似てるけれど、もっと乾いている。私の首筋の汗がすっと引く。

「二匹目」湊は言って、私の前に立つ。

降ってくる。今度は米粒じゃない。ビー玉よりちょっと大きい、黒い丸。着地の前に割れて、内側から“何か”がぬるりと出ようとする。輪郭を持たないのに、目より先に匂いけが肌にささる。夏の犬小屋の奥に置き去りにされたゴム、みたいな。

「息を合わせて」湊が言う。

「どうやって」

「今、君がしてるみたいに」

気づくと、私は湊とおなじテンポで息をしていた。吸って、吐いて。吸って、吐いて。二回に一回だけ、すこし長く吐く。そのリズムで、湊の金属空気を切る。殻の破片が粉になり、風だけが残る。

「……ほんとに、アンゴルモア?」

名前が先に来る怪物っているんだよ」湊は肩の力を抜きながら言う。「“恐怖の大王”って言葉空気が好きなんだ。空気は、好きな言葉に寄ってくる」

そこまで聞いたところで、屋上のドアがギイッと鳴って、私は心臓を落としかけた。風より静かな足音制服足音じゃない。

「遅い」湊が言う。

「早すぎる」低い声が返す。私は反射でフェンスの陰に一歩引いて、ドアのほうを見る。黒いTシャツに薄いグレーのシャツを重ねた、涼しい顔の男の子。髪は長くも短くもなく、目は印刷された数字みたいにブレない。

「……え?」

今日は偵察だけって言ったろ」と彼は湊に向かって、とても小さく眉間を寄せる。「初対面を屋上でやるの、ミス確率上がる」

「じゃあ、屋上じゃないと見えないものもある」湊はさらっと返す。

二人は友だちっていうより、同じ地図の別ページ、という感じ。

「澪(れい)」と彼は短く名乗った。手にPHSアンテナ二本。画面に点の地図数字が流れて、一瞬だけ止まる。

「下、駅前に一件。夜は濃い」

「夜?」私はつい口を出す。「夜まで?」

今日の七の月、最後から」湊は私を見る。「帰り道、寄り道をしてもいいなら、案内する」

案内、ってすごくヘンな言い方。でも私はうなずく。喉が乾いているのに、声はちゃんと出る。

湊は金属を胸の紋に戻し、手すりに軽く触れてから踵を返した。澪はPHSを親指で弾いて、何かを送信して、何も言わず私たちの前を歩く。三人で階段を降りると、校舎の匂いが一瞬だけ“普通”に戻って、私はその普通を鼻に詰めておこうと思った。(後で必要になる普通がある、って、新井素子の本に書いてあった気がする。気がするだけで、どのページかは思い出せないけど)

駅前夏休み夕方の顔をしている。ロータリーバスマクドナルドの前に行列ガチャガチャの前で小学生が揉めてる、CDショップではラルクポスターゲームセンターからドリームキャストデモ音。風鈴みたいな高い音が一瞬だけして、次の瞬間、音が全部半拍ずれる。

「来た」澪が言う。

誰も気づいてない。サンダル女子高生も、サラリーマンも、ショッピングカートを押すおばあちゃんも、誰も。

から降りるものは影じゃなくて、空気の厚みの差。見えるのは、ここにいる三人と、そして、たぶん私だけ。

湊は前に出る。澪は周囲を見渡して、最も“記録”の薄い位置を選ぶ。道路標識の影と自販機の影が重なる場所

「ここなら、ニュースにならない」

ニュースにならないって、そんな基準ある?」

ある、と澪は言わないで、目で言った。

湊の肩が、呼吸といっしょに上下する。私はそのリズムに合わせる。吸って、吐いて。吸って、吐いて。なぜか一緒にやると心臓が落ち着く。(恋とかじゃなくて。いや、恋かもしれないけど、いまは違う)

殻のない降りは、匂いだけで先に来る。不意打ち。目の端で捉えるまでに、鼻が先に反応して、汗腺が縮む。湊の金属空気を切り、澪のPHS画面の数字が揃い、私の呼吸が三拍目で長くなる。カチッと音がして、見えない何かが折りたたまれる。駅前はなにも起きなかった顔に戻る。

「——ねえ」私は息を整えながら言う。「これ、毎日?」

「七の月は毎日」湊は金属しまう。「終わったら、少しだけ静かになる。少しだけ」

その“少しだけ”の言い方が、もう経験者の声で、私は急に怒りたくなって、でも怒っても仕方ないから、代わりに缶の自販機麦茶を買って三人にわけた。湊は半分だけ飲んで、缶を私に返す。澪は口をつけずに、冷たさだけ指に移して返す。私はベンチに座って、残りを一気に飲んだ。

「帰り道、送る」湊が言う。

「送らなくていい」私はつい強めに言う。「ひとりで帰れる」

「見える人を、ひとりにしない」

またそれ。私はむくれて、でも、足は自然に彼らと同じ方向へ動いていた。

交差点信号が青に変わる。横断歩道を渡る瞬間、風がすっと変わって、私は振り向く。人混みのむこう、ビル屋上の縁。夕陽の切れ端のような光のところに、白いシャツの誰かが立ってこちらを見ていた。

まばたきしたら、いない。

「いまの」

「気づいた?」澪が初めて少しだけ笑う。「いい目だ」

「誰?」

「多分、明日には“こちら側”に来る」湊は短く言った。「きれいな顔をしてる」

家の前で別れるとき、湊は「また明日」と言いそうにした顔でやめて、「風の匂い塩辛くなったら、上を見て」と言った。

私はうなずいて、門扉の前で一回だけ深呼吸した。玄関を開けると、母が台所ゴーヤチャンプルーを炒めていて、テレビは「Y2Kに備えて」の特集をやっていて、父は食卓新聞を広げ、「大丈夫だよ」といつもの声で言う。

私は自分の部屋でMD再生して、PHSアンテナを出して、引っ込めて、出して、引っ込めて、意味のない儀式を二十回くらいやってから、ベッドに倒れ込んだ。天井蛍光灯カバーに、屋上フェンスの格子が重なって見えた。

眠る直前、窓の外で、ほんの少しだけ風が塩辛くなった気がした。私はカーテンをめくって、上を見た。空はぜんぶの青を混ぜたみたいな色で、星はまだ点かず、遠くのどこかで雷の写真だけフラッシュが光った。

明日も、屋上に行く。

明日も、見える。

明日、もうひとり来る。

七の月は、まだ終わらない。

2

夏休みの昼下がりって、テレビがやたら静かになる。

ワイドショーが終わって、ニュース時間までの隙間に流れる通販番組マッサージチェアとか。美顔器とか。私は居間スイカバーを食べながら、母がアイロンをかける音を聞いていた。

PHSが震えた。メール文字数は少なく、「屋上」とだけ。差出人不明。昨日と同じ。

——行くしかない。

理科準備室の窓をまたいで、椅子を蹴って屋上に出る。

照り返しが強い。空気が音を立てる。セミは昼なのに狂ったように鳴いていて、私の制服は汗を吸ってもう重たい。

「来た」湊がフェンスにもたれていた。

隣には澪。無口な彼は今日PHSを指先でいじって、画面に流れる数字を追っている。

そして——もうひとり。

髪は少し長く、色素の薄い瞳。美少年しか言いようがない顔立ちなのに、目の奥がひどく静かだった。笑ったとき、光がこぼれるというより、光が寄っていく感じ。

「碧(あお)」と湊が紹介する。

よろしく」碧はにこりと笑って、私の袖を軽くつまんだ。指先が冷たい。

「三人?」私は尋ねる。

「四人」湊が言う。「君を入れて」

「えっ、いや、私なんて」

「見えてしまった以上、もう“向こう側”だよ」澪は画面から目を離さずに言った。

私は息を呑んだ。昨日から、すでに普通ではなくなっている自分を、もう否定できない。

——

夕方私たちは駅へ向かった。

ロータリーに人が溢れている。コンビニの前では中学生立ち読みして、パン屋からは焼きたての匂いバス停のベンチに座るおばあちゃん団扇をぱたぱたさせている。

そんな雑踏のなかで、突然、音が半拍ずれる。

通りすぎる電車ブレーキ音が伸び、子どもの笑い声が濁り、セミの声が一瞬だけ空気に沈む。

「来た」澪が小さく告げる。

から、殻が落ちる。最初は見えない。でも、確かにそこにある。私たち四人の目にははっきりと。

ビー玉より大きな黒い殻。地面に触れる前に割れ、中からぬるりと何かが出る。匂いは昨日より強烈。鼻の奥が焼ける。

「人混みの中は厄介だ」湊が前に出る。

周波数を合わせる」澪はPHSを高く掲げ、ボタンを素早く叩いた。

大丈夫大丈夫」碧が私の肩に手を置いた。「君は息をするだけでいい」

から出てくる“それ”は、人の目には映らない。でも私には見える。輪郭は定まらず、影が水に溶けるみたいに揺れる。だけど、確かに街を食おうとしている。

「湊!」澪の声。

湊は棒を伸ばし、空気を裂いた。

刃ではなく、ただ音。だけど“それ”がたじろぐ。

碧が微笑みながら指先を空に走らせる。風の流れが変わり、影の形が折れ曲がる。

「今だ」湊の声に、澪のPHS数字が揃う。

私の呼吸が、彼の肩の上下に合わせて整う。

一瞬、世界が止まった。

そして、影は粉になって消えた。

駅前は何も起こらなかった顔で、再びざわめき始める。人々は誰も気づいていない。

——

「なに、これ、ほんとに毎日?」

ベンチに座り込んで、私は麦茶を一気に飲み干した。

「七の月は毎日だ」湊が答える。

「でも、七月が終わったら?」

「少しだけ静かになる」碧が柔らかく笑った。「でも、“恐怖の大王”は終わらない。七月の名を借りてるだけだから

澪は黙ってPHSを閉じた。その目は冷たいけれど、どこかで私を見守っているようでもあった。

私は三人を見回して、息を吐いた。

「……わかった。もう知らないふりはできない。だから——」

「ひとりにはしない」湊が言った。

その言葉は、昨日よりもずっと重く、強く響いた。

——

夜。帰り道。

商店街アーケードにはまだ人がいた。ゲーセンの前でカップルプリクラの袋を持って笑っている。CDショップからELT歌声が流れている。

そのとき空気がまたずれた。

「また?」私が言うと、碧が肩をすくめる。「今日は濃いからね」

ビル屋上夕陽を背にして立つ影があった。

制服でもない。黒でもない。白いシャツ

その人は、確かにこちらを見ていた。

次の瞬間、いなくなった。

「今のは?」

「気づいた?」澪が珍しく少し笑った。「君、ほんとにいい目を持ってる」

「……誰?」

明日、会える」湊は短く言った。「俺たちの仲間になる」

——

玄関を開けると、母がテレビを見ていた。

ニュースは「何もなかった一日」を語っていた。

私は自分の部屋に入り、PHSアンテナを伸ばしては引っ込め、伸ばしては引っ込め、意味のない儀式を二十回くらい繰り返した。

屋上の風がまだ、肌に残っていた。

三人の声も、影の匂いも。

そして、明日現れる誰かの姿も。

七の月は、まだ終わらない。


3

七月三十一日。

カレンダー数字が赤くも青くもないのに、どうしてこんなに特別に見えるのだろう。

”終わる”という言葉が、宿題ノートよりも、日めくりの紙よりも、今日は妙に重たかった。

午前はやけに晴れていた。

コンビニで買ったガリガリ君が一瞬で溶けるくらいの青空

でも午後になってから、光は濁った。セミの声がかえって甲高く響く。

私はPHSを握りしめ、またメールが来るのを待った。

震えた。文字はやっぱり短く「屋上」とだけ。

屋上のドアを押すと、三人が待っていた。

湊。

澪。

碧。

そして昨日見た“白い影”が、今日はそこに立っていた。

「紹介する。彼も仲間」湊が言った。

白いシャツ少年は軽く会釈をした。年は私たちと変わらないのに、目の奥だけが遠い。「……雅(みやび)」と小さく名乗った。

四人の男子と、私。

屋上の風は重たくて、フェンスの金網が湿っているみたいだった。

本体が来る」澪はPHSを掲げ、数字の羅列を見せてくる。意味はわからない。でも、ただ事じゃないことは伝わる。

「恐怖の大王」碧が肩をすくめながら微笑む。「七月が終わる、その瞬間に」


雷が鳴った。

雲の端が割れ空気が低く唸った。

私は一歩後ずさったが、湊が前に出た。背中越しに、彼の肩の呼吸が見える。

大丈夫。合わせればいい」

「……どうやって」

「昨日と同じ。君は息をするだけ」

影が降りてきた。

殻じゃない。粉でもない。

“名状できないもの”が、街を覆いはじめる。

匂いが先に来る。鉄錆とゴムと、夏の終わりの湿気を全部混ぜたような匂い

澪はPHSを打ち込み、数字を揃える。

碧は風の流れを変える。

雅は静かに印のような手の動きをして、影の裂け目を縫い合わせる。

湊は棒を構え、私の前に立つ。

「……来るぞ」

大王の影は、顔を持った。

知らない誰かの顔。

でもなぜか懐かしく、私の記憶の底を撫でる顔。

「来る」澪が短く言う。

「させない」湊が返す。

影が迫る。世界が歪む。

人混みの声が止まる。時計の針が動かない。

この一瞬に、すべてが収束していく。

湊は前に出た。

「俺がやる」

「待って!」思わず叫んだ。

「君をひとりにはしないって言ったのに」

湊は、振り返らなかった。ただ、少し笑った。

「ごめん。今日は、俺だけで強がらせて」

影の中心に踏み込む

棒を構え、全身を“蓋”にするように。

世界が一秒、無音になった。

雷鳴。

セミの声。

ガラスが震える。

影はたしかに消えていた。

残されたのは、三人の男子と、私。

澪は黙って画面を閉じ、碧は笑わずに目を伏せ、雅は静かに空を仰いだ。

湊の姿は、なかった。

「……どうすればいい?」私は震える声で尋ねた。

「何もしない」澪が答える。「ニュースにならないこと」

「覚えておくこと」碧が続ける。「ひと知れず、覚えていること」

雅は小さく頷いて、目を閉じた。


夜のニュースは「何も起きなかった一日」を語った。

大雨の映像渋滞情報経済数字

父は「大丈夫だよ」と笑い、母は冷蔵庫ペットボトルの水を入れた。

私は自分の部屋でMD再生した。

宇多田の声が、少しだけ遠く聞こえた。

PHSに一通だけメールが届いた。差出人不明。本文は一行。

——風が変わったら、笑って。

私は、笑った。泣きながら。



翌日。八月一日

空は夏の顔をしていた。

三人の男子と、コンビニの前でガリガリ君を食べた。

棒を見せ合って、当たりだの外れだの笑いあった。

でも、屋上の風は、まだ四人分吹いていた。

ひと知れず、私たち対峙した。

恐怖の大王は、たしか存在した。

そして、七の月は、静かに閉じた。

2025-08-25

社員タグ付けて行動を研究した時に測定できる組織パフォーマンスって何やねん

組織パフォーマンスをどう定義しどうやって計測したのかわからんとなんとも言えんはずやけど

X民はやけに自信満々に断言するよなあ🥱

2025-08-15

AI嫌い

絵もプログラミング最近始めた下手の横好きだけど、やってて楽しいところばかりAIがとってく

↑という愚痴AIにぶつける

特に話し方については指示を出していないが、自分のところのAIはやけに物腰が低い

2025-08-10

表現規制したい人たちを野放しにしてたら、それを見ていた人から「じゃああれも規制していいんじゃないか?」と考える人が出てくるのは当たり前だよなぁ

なんか表現の自由戦士はやけ復讐論とか相互確証破壊論にこだわるけど、なんで「表現規制派をどうにもできなかったから、それをやっていいんだと思う人が増えて表現規制派が増えた」っていうまったく無理のない考えが思いつかないんだろ

表現の自由大事だよ〜」って口で言うだけで、規制の動きに一切リスク負わせられないんだから、そりゃ増えることも全然あるだろうよ

2025-07-25

anond:20250724231622

典型的な敗北宣言で草。

いっつも最後はやけモテとかチギュアーしか言えなくなるよね

2025-05-06

anond:20250505220624

2025年5月6日、ワイの日記やで。

から霧が出とった。白い靄が山の斜面を這うように流れとって、空気はぴんと張りつめとる。ゴミーも今日はやけに静かで、ワイの肩に乗ったまま、羽一枚動かさへん。そんな中、昨日見つけたスカーフ道筋をたどって、さらに山奥へ踏み込んでいった。

そして――見つけたんや。

谷を見下ろす崖の縁で、木々の間に開けた小さな空き地。その中央に、ぽつんと立ってた。フェミちゃんが。

「……フェミちゃん!」

叫んで駆け寄ろうとしたけど、足が止まった。

何か、おかしい。

姿形は間違いなくフェミちゃんなんやけど、背筋がぴんと伸びすぎてる。まるで糸で吊られてるみたいに、無駄のない姿勢。風が吹いても、髪一本も揺れん。ワイが近づいても、振り返らへん。ただ前を向いたまま、じっと谷の向こうを見とる。

フェミちゃん……ワイや、戻ってきたで。おまえを探しに来たんや」

近くまで来てようやく、彼女ゆっくりと顔だけこちらへ向けた。その動きが、まるで機械じみていて、背筋が寒くなった。

「……ワイ?」

声も、どこか違う。響きは確かにフェミちゃんのものやけど、音の裏にうっすらと金属のような響きが重なっていた。無機質で、遠い。

フェミちゃん、おまえ……大丈夫か?」

フェミちゃんは数秒黙ったまま、ワイをじっと見た。そして、唐突に言うた。

「こっちの世界に、慣れすぎたのかもしれん」

それだけ言って、また前を向いた。

ゴミーが小さく「ぷぴ」と鳴いて、ワイの耳元で羽を震わせた。ワイは反射的に、スーリヤの針に手をやった。まだ確証はないけど、今目の前におるフェミちゃんは、何かが――決定的に――違う気がする。

けど、見捨てるわけにはいかん。あの谷の向こうに、何かがあるんやで。

2025-04-23

新宿駅内でみゃくみゃくグッズ売ってるけど、今度見てみようかな

帰りはやけに人気でレジ行列できてんだよね

2025-04-14

ここ最近愛知万博が持ち上げられすぎじゃね?

おまえら20年前、愛知万博に行ったのか?

俺が住んでいるのが関西圏だったってのもあるだろうけど、当時、そんなに愛知万博話題を聞かなかったし、盛り上がっている印象が全くない。当時は今よりテレビも見ていたはずなのに。

弁当の持ち込みが禁止されていて入場時の検査メチャクチャしかったとか、小泉総理がそれを許可したとか、長井秀和小泉総理最大の成果だ、間違いない!ネタにしていたとか、キッコロモリゾー木殺森憎という当て字にして弄られていたとか、愛知万博の脇の部分はやけに覚えてるけど、本筋の万博の話は全く印象がないな。冷凍マンモスがどうのこうのって話も、最近初めて耳にしたし。何というか、いつの間にか始まってて、いつの間にか終わってたイメージ

2005年だと福知山線脱線事故とか郵政解散とか、デカ話題が多かったから、愛知万博話題がそれに負けてるのも大きいな。2005年の流行語大賞を見てると、トップテンにも愛知万博に関する用語がない(一応、「愛・地球博」という言葉ノミネートはされている)。

当時大学生だったけど、周りで行ったという話も聞かなかったからな。関西から愛知なら、行こうと思えばそこまで遠い距離でもないのに。俺も行けたら行くか~くらいのノリで考えていて、万博バスツアーの話を友人に振ったこともあったが、友人側があまり乗り気じゃなかったから結局行かなかった。

2025-03-27

anond:20250327055623

なんかお金がない以上にそれを理由にひたすら否定的なことしか言われないのが嫌だったのかなーと思ったかなー。

派遣社員からってドリンクバーつけるかで悩んだりコンビニ行けないくら貧乏なわけがなかろうに。この女性には貧乏云々じゃないところになんか問題があるのだろう

あくまで私個人はやけど、お金いからという言い訳はしたくないな~相手にいい年して遊ぶお金もない奴と思われたくないか

2025-01-30

今日はやけに非公開ブクマが多いな~と思って「すべて」の1ページ目の非公開ブクマ率を計算してみたら94%だった

ファーストブクマカがいなくなったのか?それとも非公開ブクマカが猛威を振るっているのだろうか

https://anond.hatelabo.jp/20250117221120

2025-01-17

ガンダムオタクストーキングされた話

――当たり前の毎日が、ある日突然不気味な影に蝕まれるなんて、少し前のわたしなら想像もできなかった。わたし中学三年生。受験を控えているため、普段は塾に通ったり、学校でも進路の相談をしたりと、それなりに忙しい日々を送っている。家は住宅街にあり、学校までは歩いて15分ほど。街灯の数はそこそこあるし、真夜中に外を出歩くわけでもないので、これまで怖い思いをしたことほとんどなかった。

それでも、一学期の終わりごろから微かな“違和感”が生まれ始めた。最初は通学路を歩いているとき、「視線を感じる」という程度だった。ふと、だれかに見られている気がして後ろを振り返るのだけれど、そこに人の気配はない。でも、どうにも落ち着かない。そんな日が何度か続いて、夏休みが終わった頃には「もしかしたら、わたしの思い過ごしじゃないのかも」と感じるようになった。

決定的だったのは、ある夕方、塾が終わってから夜に帰宅するときのこと。友達と途中まで一緒に歩いていたが、その子コンビニに寄ると言うので先に別れ、一人で家に向かうことになった。少し薄暗くなってきてはいものの、まだ人通りがゼロというほどでもない時間帯。だけど、その日はやけに背後が気になった。足音が一つ増えているような気がする。怖くなって、道路脇の自販機ジュースを買うふりをして、そっと後ろを見やった。すると、街灯の下に男の人が立っているのが見えた。30代後半くらいに見え、腹が少し出た体型。見覚えのない顔なのに、こちらをじっと見ている。その目つきに、不気味な笑みが浮かんでいたように感じた。

一瞬、心臓が止まりそうになった。「もしかしてわたしをつけている…?」考えたくなかったが、その可能性を否定できなかった。その日は慌てて家に帰り、両親にも打ち明けた。母は「気をつけなさい」と言い、父は「危なそうだったら遠慮なく叫べ」とアドバイスをくれた。わたし自身も「気のせいじゃないかも」と半ば確信していたけれど、決定的な何かがあるわけでもないので、どうにも気持ちが晴れない。そんな宙ぶらりんの状態が続いていた。

ところが、数日後、ついにその男が正面からわたし接触してきた。学校から帰ろうとして、家のすぐ近くの角を曲がったところで、まるで待ち伏せしていたかのように声をかけられたのだ。

「ねえ、中学生だよね? ガンダムって知ってる?」

思いがけない質問に、一瞬「え…?」と固まってしまう。すると男は、妙にテンションの高い声で続けた。

ガンダムだよ、ガンダムプラモデルとかあるだろ? あれ、ガンプラって言ってさ。実は俺、ガンプラ転売して生活してるんだよ。レア限定品とかはネットで高く売れるから、なかなか儲かるんだよね」

まったく身に覚えのない話を次々と畳みかけられて、困惑しかなかった。わたしガンダムに興味があるわけでもない。何より、この男がどうしてわたしの家の近くで待ち構えているのかが気持ち悪い。けれど、怖さと戸惑いで体が動かず、言葉も出なかった。

「もし興味あったら、一緒にガンプラ買いに行かない? 教えてあげるよ。限定版とか、結構大変なんだけどさ、手に入ると嬉しいんだよな」

意味不明勧誘に、わたしは思わず後ずさった。怖い。この人はわたし待ち伏せして、しかもこんな会話を一方的に押しつけてくる。わずかに震える声で、「興味ないんで、すみません」とだけ言うと、逃げるように家の門を開けて中に入った。ドアを閉める直前、わたしを見つめる男の目はまだ笑っていた。あの不気味な笑みが焼きついて、頭から離れなくなった。

その日から、男はわたしの周囲でますます姿を現すようになった。朝、家を出るとき、門の外に立っていることもある。学校の近くで待っていることもある。わたしだけでなく、クラスの友人たちにも目撃されはじめ、「あの人何?」「怖いんだけど」と噂になった。「髪が脂ぎっていて、いつもガンダムTシャツ着てるよね」とか、「30代後半くらいかなあ。ガンプラ転売ってホント?」なんていう憶測クラスで飛び交っていたけれど、わたしからすれば笑い事ではなかった。

どうしてわたしターゲットにするのかが分からない。ガンダムなんてまったく興味ないし、むしろ男の人が言うようなレア商品価値もピンとこない。無視してやりすごそうにも、毎日しつこく声をかけてくる。「おはよう。昨日はガンダム観た?」「ガンプラ買うなら今がチャンスだぞ」など、訳の分からない話ばかり。はじめは無視して歩いていたのだが、そのうち腕を掴まれそうになることもあった。

「逃げんなよ。俺は優しく教えてやろうとしてるのに」

その言い方が、もう普通じゃない。目の奥が怖くて、まるで自分が獲物にされているような、そんな凄みを感じた。学校先生相談し、生活指導の先生が一緒に帰り道を巡回してくれる日もあった。でも、その日は男の姿は見当たらない。先生がいない日に限って、わたし通り道にひょいと現れるのだ。わたし携帯を握りしめて、いつでも警察電話できるように心がけていたが、相手がすぐに手を出してくるわけでもない。曖昧距離を保ちながら、ネットリと追いかけられている感覚だった。

さらに恐ろしかったのは、わたしSNSを探し当てられたこと。プロフィール写真家族友達との写真だったが、そこからわたし本人を特定したのだろう。急にフォロー申請が何件も届き、メッセージで「一緒にガンプラ見に行こうよ」「ガンダムの良さを教えてあげるからさ」としつこく書かれたものが送られてきた。もちろん拒否したけれど、それでもアカウントを作り直して追いかけてくる。

そのSNSアイコンガンダム関係のものばかり。タイムラインにアップされている写真には、大量のプラモデルの箱が積み上げられており、「最近ゲットした限定版。転売すれば倍になるけど、コレクションにしてもいいよな」とか「本当に好きな子出会えたら、このコレクションを見せてあげたい」など、怪しいコメントが並んでいた。わたしは背筋が凍る思いだった。どうやってブロックしても追いかけてくるし、日に日に執着が深まっているようにすら感じられる。

両親も事態を重く見始め、警察相談したほうがいいのではないかという話になった。わたしは「でも、実際に身体的な被害には遭っていないし…」と気が引けていた。学校先生も「警察通報して相手を刺激するのが心配だ」という雰囲気で、結局「注意して帰りましょう」というアドバイスのまま、なかなか大きく動くことができない。その間にも、わたし不安はどんどん募っていった。

そして、ある日の夕方、決定的な恐怖に襲われる事件が起きた。学校文化祭準備があったため、いつもより帰りが遅くなったわたしは、友達と途中まで一緒に歩いたあと、一人で家に向かっていた。塾の時間も迫っているし、ちょっと急ぎ足だった。ふと曲がり角を曲がった瞬間、目の前に男が立っていた。わたしは思わず悲鳴を上げそうになったが、声にならない。

「こんなに遅くまで学校にいたのか。女の子が危ないよ」

まるでわたしの行動を全部把握しているかのような口ぶり。彼はあの不気味な笑みを浮かべながら、何か箱のようなもの差し出してきた。ガンプラパッケージだ。派手な色のモビルスーツが描かれている。

「これ、新作の限定ガンプラ転売したら高いけど、お前にやるよ。あ、でもただじゃないよな? 俺の好意ちゃんと受け止めてくれるなら、ってことだけど」

彼の言葉の節々に感じる狂気めいた雰囲気。逃げなければ、と思っても、足がすくんで動かない。必死に頭を回転させ、「受け取るふりをして箱を落として、その間に逃げる」という作戦を瞬時に思いついた。わたしは手を差し出すと同時に、わざと勢いよく箱を地面に落とした。

「何してんだよ!」

彼は怒鳴り、落ちた箱のパーツが散らばる。わたしはその隙に走り出した。涙があふれて、視界がにじむ。背後から乱暴足音と、「待て! ふざけるな!」という声が聞こえた。息が苦しくなりながらも、どうにか大通りまで走りきり、人通りが増えたところで立ち止まる。彼は少し離れた場所に立ち尽くし、苛立ったようにわたしを睨んでいたが、さすがに人目が多いのか追っては来なかった。

恐怖と悔しさが混じった感情で、わたしはその足で交番に駆け込んだ。そこで出会った警察官は、最初は「どうしたの?」と優しく声をかけてくれた。わたし必死に息を整えながら、ここ数週間の出来事を話した。ストーカーまがいの執着や待ち伏せ行為SNSでのつきまとい……警察官の表情が真剣になっていくのが分かった。

連絡を受けた両親が交番に駆けつけ、わたしが受けた被害を詳しく話すと、警察官は「これ以上放置できない」として本格的に捜査に乗り出すことを約束してくれた。わたしはそこでようやく少しほっとしたが、同時に「もっと早く相談しておけばよかった」と強く思った。

それから数日後、警察が男を逮捕したとの連絡があった。わたしの塾の前で、再び待ち伏せしているところを張り込んでいた捜査員が確保したらしい。男は「自分はただガンダムの良さを伝えたかっただけ」などと弁明していたようだが、わたし写真を無断で撮影して保存していたり、行動パターンメモに書き込んでいたりと、数々の“ストーカー行為”の証拠が見つかり、転売目的で集めたガンプラの山とともに押収されたと聞いた。

ニュースサイト地域欄に、小さく「30代男性ストーカー規制法違反逮捕」と載っていた。名前は伏せられていたけれど、間違いなくあの男だろう。あの不気味な笑み、尋常ではない執着心、SNSのしつこいメッセージ……わたし普通生活は、そんな彼の行動で大きく乱されていた。いま思うと、本当に怖かったし、もし警察に駆け込むのが遅れていたら、もっと大きな被害に遭っていたかもしれない。

男が逮捕されたと聞いてからわたしはようやく外に出るときの恐怖から解放された気がする。とはいえ、すぐに「もう安心」とは思えず、しばらくは父や母に迎えに来てもらったり、友達と一緒に行動したりして、用心深く過ごした。学校先生友達わたしを気遣ってくれたおかげで、少しずつ心の傷が癒えていったように思う。

受験勉強が本格化するにつれ、わたしはあの出来事を少しずつ振り返る余裕もできた。中学生のわたしには、あの男の「ガンダム転売」という仕事自体がピンと来なかった。好きなものを売買することで生計を立てている大人がいることは分かったが、それを理由他人を追い回し、恐怖に陥れる行為正当化されるわけがない。何より、彼自身ガンダムの魅力を熱く語る一方で、人の気持ち無視した行動ばかり取っていたことに、強い矛盾を感じる。

今では、わたしが夜道を歩いているとき、あの男の足音想像してしまうようなことはかなり減った。完全にトラウマが消えたわけではないけれど、警察家族学校先生など、わたしを守ってくれる大人いたことで「一人じゃない」という安心感を得られたのが大きいと思う。

この一件で学んだのは、「変だな、おかしいな」と感じたらすぐに誰かに相談することの大切さだ。最初は「大げさかな」「気のせいかな」と思って、なかなか行動に移せなかった。でも、もしもう少し早い段階で大人相談していれば、あんなに怖い思いをしないで済んだかもしれない。今はその後悔を活かして、少しでも不安を感じたら周囲に声を上げるようにしている。

ガンダムオタクストーキングされるなんて、わたし人生まさか起こるとは思わなかった。だけど、最終的に彼が逮捕されたことで、わたし生活は再び平穏を取り戻した。この先も、いつどこで危険が潜んでいるかからいからこそ、小さなサインを見落とさないように、そして自分の身を守るための行動をためらわないように――そう心に刻みながら、わたしはこれからも前を向いて生きていこうと思う。

2025-01-12

私のパートナーはてな匿名ダイアリーユーザだった

 普段の何気ない会話の端々に、妙な言葉かいや独特の言い回しを感じることがあった。たとえば、やけに「はてブがどうの」とか「増田でこんな話があって」などといったフレーズを使うのだ。わたし自身は以前からSNSTwitterくらいしか触れてこなかったし、「はてブ?」と訊いても「はてなブックマークのことだよ」と軽く流されるだけだった。もちろん、わたしには特に興味もなく、「そんなものがあるのね」という程度でいつも終わっていた。

 今思えば、彼のなかで何かを吐き出すための行為が「はてな匿名ダイアリー」だったのだろう。わたしが初めて「匿名ダイアリー」というものにピンときたのは、職場の同僚と雑談をしていたときだった。そこでは、ニュースサイトSNSには決して書けないような本音愚痴、あるいは日常の裏側を覗き見ることができるという話題で盛り上がっていた。わたしは正直、その場に居ながらあまり話についていけなかった。ふだんの生活で、そこまで"裏の声"に触れたいとも思わなかったし、それを必要とするほどの秘密や不満を抱えているとも感じていなかったから。

 だけど、そのとき話に出てきた「増田」というニックネーム存在だけは頭に残った。なんでも、はてな匿名ダイアリー投稿者を「増田」と呼ぶらしく、投稿される記事の多くは日常の不満や、家族恋人への隠された感情職場内緒話などが一気に吐き出されている、いわば"匿名文化"の最前線なのだそうだ。

 あまりにも秘密めいていて、少し不気味に思った。身近な誰かが、あそこに匿名で何かを書いているのかもしれない。そう思うと、世の中のどこに潜んでいるかからない"本音"のかけらが、いつか自分自身に向けられる可能だって否定できないわけで、なんだか落ち着かない気分になった。

 それから数週間後、わたしパートナー――以下、彼と呼ぼう――の部屋で何気なくノートPCを眺めていた。というのも、彼がシャワーを浴びているあいだ、友人からメッセージを処理しようと思ってパソコンを借りたのだ。もちろん勝手プライベートフォルダを覗き込むつもりはなかったし、最初は本当に必要作業だけを終わらせるつもりだった。

 ところが、ブラウザのタブを見ていると、どうやら「はてな匿名ダイアリー」で何か投稿しようとしていた様子がうかがえた。たまたま前に開いていたタブの履歴に「投稿完了」みたいな文字が残っていて、わたしは一瞬、まじまじとそのタブ名を凝視してしまった。もちろん、タブをクリックすればどんな記事投稿したのか、あるいはすでに誰かがコメントしているのかを見られるのかもしれない。でも、そこに手を伸ばすかどうかで、わたしものすごく迷った。

 たぶん、わたしは彼を信じていたし、勝手プライベート踏み込むことは、もうその時点で裏切り行為のようにも思えた。とはいえ、同時に好奇心燃え上がる心が抑えられなかったのも事実だ。「ほんとうに彼が書いたものがそこにある? もしかしてわたしに関する話題が載っているかもしれない?」そんな疑問が頭をぐるぐると駆け巡っていた。

 結局、数秒だけ躊躇して、わたしマウスカーソルをそっと動かした。そして「投稿完了」と書かれたタブを開いてしまった。そこには、ほんの数分前に投稿されたばかりらしい文章が表示されていて、タイトルの部分に「恋人意見が合わない」とあった。

 胸がドキリとした。わたしと彼は最近ちょっとだけ意見が食い違うことが増えていた。お互いの仕事が忙しくなってきたこともあるだろうし、生活リズムが違うのがストレスになってきたというのもある。だから内容を確かめるまでもなく、「ああ、やっぱり彼はわたしのことを書いているんだな」と直感にわかった。

 しかし、そこに綴られていた文章想像を超えていた。ここ数日の出来事を通じて、彼はわたしの態度が冷たくなったと感じており、自分存在意義すら疑いかけているようだった。わたしはそんなに冷たくしていたのだろうか。仕事が大変で、たしか気持ちに余裕がないことは認める。でも、彼がそこまで自分の心を追いつめていたなんて、気づいてあげられなかった。

 もちろん、エントリ匿名で書かれているから、わたし名前なんてどこにも出てこない。ただ、「同棲中の彼女最近忙しくて、何か話しかけても気のない返事ばかり」というような表現がはっきりと状況を示していた。彼女わたしだということは、少なくとも当事者わたしならすぐにわかる。書き手が彼であることも、間違いなかった。

 わたしはそのエントリ最後まで読んだ。彼のささやかな悩みと不安、そして寂しさが、行間に滲むように浮かび上がっていた。それと同時に、まったく別の感情わたしの中に湧きあがってきた。――これは、一方的な言い分じゃないか。彼も忙しい時期だったのに、わたしばかりが冷たい態度を取っているかのように書かれている。でも、わたしがただ無視していたわけじゃない。そうせざるを得ないときだってあったし、お互い様の部分もあるでしょう、と。

 苛立ちと申し訳なさが入り混じって、わたしブラウザをそっと閉じることにした。戻ってきた彼に問い詰めるべきか、それとも黙っているべきか。その数秒のうちにたくさんの考えが頭をめぐり、結局わたしは何事もなかったようにパソコンを返し、「ありがとう」とだけ告げた。

 ところが、それで終わるはずがなかった。わたし自分でも意外だったのだが、その日の夜、こっそりスマホからはてな匿名ダイアリー」を覗きに行った。さっきのエントリコメント欄が気になって仕方がなかったのだ。そして、誰かが「同棲中ならしっかり話し合ったほうがいい」「忙しいのはお互い様だよ」といったコメントを書いているのを見つけて、わたしは複雑な気分になった。他人言葉なのに、なぜか耳が痛い。そう言われると、わたしが彼の話を聞く時間を本当に作ってあげていたか、自問することになる。

 翌日、仕事が終わってからわたし勇気を振り絞って彼に切り出した。「ネットでさ、匿名気持ちを吐き出すのって、どう思う?」当たり障りのない聞き方だったけれど、彼はやけに「ん?」と反応して、目を逸らすようにして笑った。「まあ、人によってはそういうのもアリなんじゃない?」彼が答えたのはそれだけだった。

 その直後、わたし仕事家事の合間をぬって、さらにいくつかのエントリを読んでみた。同じIDかどうかはわからないけれど、タイトル文章雰囲気、細部でふと感じる気配から、「あ、これ彼が書いたんじゃないか」と思しき投稿がいくつかあった。テーマは多岐にわたっている。仕事愚痴家族問題ゲーム攻略メモのようなものから恋人とどこでデートすべきか悩む話まで、本当にいろいろだ。わたしの知らない彼の一面がそこにあった。

 ただ、好奇心と同じくらい罪悪感も大きくなっていった。だって、やっぱり勝手に彼の書いた記事を探し回るなんて、うしろめたい行為だと思ったからだ。一方で、彼が匿名で吐き出している本音を「知りたい」という欲求は抑えられなかった。

 それならば、いっそわたしも「増田」になってしまえばいいのかもしれない。そう思ったのは、このまま何も言えないままでいるよりも、同じフィールドに立ったうえで彼の心の動きを感じたいという衝動があったから。自分文章を書くことで、彼の気持ちに近づけるものがあるかもしれない。そう考えて、わたしは深夜、初めてはてな匿名ダイアリー投稿しようとした。

 ところが、いざ投稿画面を開いてみると、何を書いていいのかわからない。彼について書けば彼の秘密暴露しかねないし、それは誰かを傷つけるかもしれない。だから結局、日常のささいな感想仕事で感じたストレスを数行だけ書いては消し、書いては消し、を繰り返すだけだった。

 そのとき感じたのは、彼があれだけ多種多様感情匿名自由に吐き出していたのは、単純に自分を守りながら本音を書けるからだけではなくて、書く行為のものが彼の救いになっていたのかもしれない、ということだった。わたしにはなかなか打ち明けられないことでも、見知らぬ誰かに向けてなら素直にぶつけられるのだと。そこに共感アドバイスが集まれば、一瞬だけでも孤独を感じずにいられるのだろう。

 そう考えると、わたしは彼が自分に隠れて匿名ダイアリーを書いていたこ自体を責めるよりも、むしろもっとちゃんと話してほしかった」と思うようになった。もちろん、ネットに書くよりもずっと勇気のいることだろう。けれど、一度でもいいかわたしを信じて本音を話してくれていたなら、ここまでこじれなかったかもしれない。――これはわたし勝手な言い分かもしれない。もしかすると、すでに彼なりに努力した結果として、それでも言えなかったのかもしれない。

 わたしはある晩に彼を真っ直ぐ見つめて言った。「最近わたしすごく忙しかったし、言葉が足りなかったかもしれない。それは悪かったと思ってる。でも、もし何か思うことがあるなら、ネットじゃなくて、わたしと直接話してくれないかな」。すると、彼はしばらく黙ったあと、不意に笑って頷いた。「ごめん。あんまりにも気軽に吐き出せる場所があったから、そっちに逃げてたんだよね。話すのが苦手で……」

 その夜、わたしたちは今まであまり触れてこなかった話題――将来のことやお互いの家族観、仕事ストレス、そしてずっと言い出しにくかった本音――を一気に共有した。どこまで理解し合えたのかは自分でもよくわからない。でも、彼がはてな匿名ダイアリーユーザであるという“秘密”は、悪いものばかりじゃなかったのかもしれない。もしあのときわたしが気づかずにいたら、彼の不満や不安ネットの海のなかで増幅し、わたしたちの距離もっと開いていたのではないかと思う。

 匿名ダイアリーをすべて否定する気はない。それは誰にでも必要な逃げ場になりうるし、そこに書かれる文章が誰かを救うことだってある。だけど一方で、わたしは彼と直に話し合うことでしか埋められないものもある、ということを強く感じている。「匿名場所からこそ言えること」もあるだろうけれど、「顔を合わせてだからこそ言えること」もまた存在するのだ。

 いまでも、彼がどんなエントリ投稿しているのかはわたしにはわからない。おそらく、匿名で書き続けているのだろう。わたしはあえて踏み込まないようにしている。知りたい気持ちがまったくないわけではないけれど、結局のところ、「誰が何を書いているのか」を追いかけるのはきりがないし、それこそ信頼を損ねる行為だと思うから

 それよりも、彼が本当に苦しいときや寂しいときに、わたし言葉を投げかけてくれる関係でありたい。はてな匿名ダイアリーユーザであることは、彼のひとつの側面でしかない。たとえどんな匿名場所に書き込んでも、現実世界で隣にいるわたしへの思いが消えてしまうわけではないはずだ。

 もしまた、どこかではてな匿名ダイアリーを眺めているときに「これは彼が書いたかも?」と思えるエントリ出会ってしまったら。わたしは今度こそ、そっと画面を閉じるだけにするか、あるいは何も知らないふりを貫くかもしれない。けれども、わたしはもう「わたし自身気持ち」を、誰かのコメントスターに委ねるのではなく、ちゃんと彼と共有していきたいと思っている。

 そう思えるようになるまでには、いろいろな感情の波があった。読んでは傷つき、読んでは見えない敵を探すような、そんな時期もあった。だけど最後にわかったのは、相手が何かを隠しているのではなく「言い出せないものを抱えている」状態こそが孤独を深めるのだということ。匿名ダイアリー投稿を追い回すより、横にいる人間としてやれることが、たくさんあったのだ。

 そして今、わたしたちのあいだには以前にはなかった小さな合言葉がある。「ネットに書く前に、ちょっとはこっちにも言ってみてね」――彼が困ったように笑って頷く、その顔がわたしにはなにより愛おしい。彼が誰かに向けて匿名つぶやく言葉を無理に止めることはできない。それもまた、彼の大事表現方法だろうから。でも、そんな彼をわたしは真っ向から受け止めて、一緒に笑ったり泣いたりしていたい。それが、ふたりでいる意味なのだと思う。

2025-01-07

星野源さんに幸あれ

年末年始色々な番組を見て思ったという話。

紅白最初から観ていたんですよ。リアルタイムだと源さんだけ、どこか異質に見えたんですよね。

改めて見返したんですが、元気な曲に挟まれている弾き語りの落ち着いた曲。照明や化粧の関係なのか疲労からなのか、源さんはやけに青白い顔をしている。表情も少しこわばっているように見える。

これは確かにちょっと気になる。

けれど、事実としてとても優しい声で歌っていて。

以前根も葉もないことでつらい思いをされて、今回は過去に関わった他者の影響で急遽対応に追われ。 

年の瀬バタバタで心身ともに大変だっただろうに、それでも「良いお年を」とあの場で皆に言える人に。

その後のラジオではリスナーからメッセージ言葉を詰まらせ、年明けのバラエティではニコニコと楽しそうに過ごし、ドラマでは素敵な役を演じていた人に。

なるべく沢山の幸せがあってほしいなと強く、強く思った次第です。

2024-12-23

彼女への熱を冷ましたほうが良さそう

スタイルの違い、優先度の違い。

彼女がいわゆる男性っぽく、俺が女性っぽい。

 

彼女実家住まいで、彼氏いらなくね?という充実した生活をしている。

彼氏とは数週間に一度会うだけでもいいし、連絡も予定決めだけでいいタイプ

 

俺は一人暮らしで暇してる。趣味は色々あるけど彼女といるほうが圧倒的に楽しい

彼女とはできる限り一緒にいたいし、連絡はずっと取っていたい。

 

なんかこう、彼女の日々の中で俺の優先度が低いんだよな。

 

彼女の寝る前の時間電話することが多いんだけど、彼女生活ルーティンで余った時間しかないというか。。

最初毎日同じ時間にかけてたんだけど、ほぼ毎回彼女からの反応がなくて数分~30分後にかかってくるとかだから諦めた。

今日は早く寝たいか電話しないとか、その連絡もなく寝ちゃうとか、今日電話ちょっとだけとかもあって、基本的にまず最初に削る時間が俺との電話

 

あと彼女の空いてる週末はうちに泊まりにくるけど金曜日からは来ない。趣味時間に使いたいから。

でも月~木も仕事終わってからはずっと趣味時間なんだよ。だいたい一日3~4時間

うちに来る日も午前中は趣味して、場合によっては二度寝とかして、昼がかなり過ぎた時間にならないと来てくれない。

お昼一緒に食べようって言っててもそんな感じ。

そしてあくまで予定が入っていない日だから、急に他の予定が入ったりすることもある。

俺はできる限りずっと一緒にいたいから毎週のように金曜日から来ない?とは言ってる。

 

それでも、彼女は頑張ってるらしい。

今までの彼氏でこんなに高頻度で会う人いなかったと言っていた。

連絡もめちゃくちゃ塩だし頻度も一日2ラリーぐらいだから、その間に友人とのLINEで100とか動いてたりするけど彼女としては頑張ってるとのこと。

 

でもなあ俺がメンタル弱いのもあって、会えない日とか電話できない日が続くと「優先度が低いなー」ってメンタル落ち気味。

会ったら彼女もでれでれでバカップルな感じではあるから、あとは俺がどれだけ耐えられるかなんだと思ってるけどしんどい

ここに書いたことも「こうしてほしい」「こうしてくれると嬉しい」っていう形でほぼ伝えているし。

俺がどれだけ耐えられるかだな、みたいなことも軽く言ってる。

彼女はやけに俺への評価が高くていつ俺に飽きられるか不安がってるらしいけど「いや逆なんよ」という話を何度かしてもいる。あと不安がってる人のムーヴではなくね?

 

とはいえ彼女が変わるとは思えないので俺の熱を冷まし気味にするほうがいいんだろうなって。

でも俺の好感度の曲線って二次関数的なとこがあるから、それで一気に興味なくなっちゃったりするのも怖いんだよなあ。

俺の側の問題は一緒にいれれば解決するから半同棲同棲できればいいんだけど、彼女あんまり前向きじゃないんだよな。趣味時間とかお金の面とかで。

2024-12-22

おれって鈴村あいりだったんだあ

 コバヤシがタヤの待っているコーンホール練習場に着いたときにはもう練習が始まってから時間三十分も過ぎていた。

「もう何もかも終わっちゃったぞ。こっちチームが22点、そっちチームは9点だ」とタヤが言ったが、コバヤシは「いいよ。おれ、今日プレイしない」と言った。それからコバヤシは思い出したようにトイレへ駆けていった。

やれやれ公式戦は来週なのに」。数分後、小走りで戻ってきたコバヤシは、まるで誰かに怒られたかのような表情で下を見ていたが、タヤはまったく気にしない様子でコーンホールの片付けを始めた。

 コバヤシは「おれ、プレイしないぜ」と言うとじぶんの左の耳たぶを触ったりひっぱったりした。

 その後、ふたりはそのスキニータイプズボンに恥じない速さで練習場をあとにすると、これから昼食を取る人間の歩幅でもって地上へと出た。

 それからコバヤシは機を見計らって以下のような内容を話し始めた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 先週、その運動場のベンチで肌を焼きたがっている男はすくなくとも30人はいた。だからコバヤシとオオヤがそれぞれうつ伏せと仰向けになってセロトニンを分泌するまでには二時間ほど待たなくちゃいけなかった。

テレビでその人が、じぶんを大切にしなさいって言ってるのを聞いたんだけど、こんなお金持ちの言うことなんだからきっと正しいんだろうなーとおもった。でも飲み仲間から「お前そのままじゃやばいよ」って言われたら確かにそうかもなって思った。だから何かしようかなって」コバヤシが言った。

 オオヤは起き上がると横に置いてある2リットルペットボトルに口をつけてこう言った。

「たとえば?」

「わからないけど。みんなが言うには、じぶんのために自主的に動いてみるだとか」

「いい心がけだな。それならいい話があるぞ。お前にぴったりな話だ。今度、江ノ島ゴミ拾いがある。一緒にどうだ?」

「えー」

「それなら今度、江ノ島ゴミ拾いするんだけど一緒にどうだ?」

「うん?」

「よく考えてもみろ。これ以上ない話だろ。他に当てがないんだし。よく考えてもみろよ。これ以上ない話だぜ」

「あー、まあそれもそうか」

 ボトルキャップを閉めると、オオヤはふたたび仰向けの姿勢になった。お互い日が沈むまで一言も喋らなかった。

 後日ふたり小田急線に乗って江ノ島海岸までいくと、そこにはもうすでにゴミ拾いの集団がのさばっていた。するとひとりの女性がコバヤシたちのもとへ近付いてきた。

「まったくイカれてる。Twitter活動報告するとこれだよ。わたしたちが先に始めたっていうのにね。遊びじゃねーんだよ。でもあんた達は別だよ、連絡くれたしね。これが終わったらそこで缶ビール開けて打ち上げするんだけどどうかしら?」

「いーです」

「あらそう? まあわからないことあったら聞きなさいな。これはわたしたち最初に始めたんだから。遊びじゃねー」

 女性は去っていった。

「えらいなー。あんなブスなのに」

 ふたりが清掃活動を続けていると、他の団体もいることに気付いてちょっと気まずい雰囲気になったりした。それからゴミはおもったより多かったので、おもったより汗だくになった。

「やーめた」とオオヤが言った。

「なにがだぜ?」

「クソつまらん」

 オオヤはそう言うと向こうの方へ走っていき、違う団体の、水着の上にシャツを着ている、アリクイみたいな女の子たちを口説こうとし始めた。するとその団体代表者がそれを阻止しようと頑張った。あまり大きな揉め事にはならなかったが押し出される形でオオヤは締め出されてしまった。

「おれもAV女優と体の構成は同じなんだから、うやまってそういう扱いをしろよ。それ相応の扱いをよ」と言いながらオオヤは戻ってきた。

 コバヤシはそれを聞いて、ピンときた。何気ないざれごとだったが、その日はやけにそれが心にひっかかった。コバヤシは、「えー、あー。てことはおれも鈴村あいりと同じなのかあ」と思った。「もしかして、じぶんを大切にするってそういうことなのか?」とも思った。

「もう帰ろうぜ。あいつら埒があかねぇ」

「おれって鈴村あいりなのかあ」

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 ここまで話し終えたコバヤシは、タヤに「おれ、SUBWAYってのを食べてみたんだけど」と言った。

「そこまで良いものじゃないぞ」

「そうなの? まあ、でもSUBWAY食べる。だからそういうのがあって、おれもじぶんのことをもっと大事にしたほうがいいのかなーって思いだした。みんなの言う事ばっかり聞くんじゃなくて、食べたいものを言ってみたり、やりたくないことはやらなかったり。徐々にだけど。自主的にじぶんを大切にしてさ。なんせおれは鈴村あいりなんだし」

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