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2025-08-23

YOSHIKIファンから見たオマージュ事件

大人になってから開催されたライブは全部じゃないが通って、今までで一番聞いたアルバムはSilent JealousyなくらいのXとYOSHIKIファン

他にも好きなアーティストは沢山居るし、音楽以外にも好きな趣味がある感じのおじさんです。

オマージュについて

オマージュって、された側に嫌だって言われたら失敗だよね。した側がフォローしたのは当然の流れだと思う。

なので、制作サイドが大人と言われているのに違和感がある。

今回の作品関係者がXのファンであることから、お囃子⇒林⇒林芳樹⇒XJAPANオマージュのHayasiiというバンド、になったと考えるほうが自然かと思う。

はてぶだと、お囃子とHayasii、林という名字関係が無いみたいなのが星集めていたが、批判のために真実を見ようとしていない姿を見たような気持ちになった。

それなりのXのファンであればYOSHIKIの姓が林で、ボーカルが出山でギター松本石塚ベースが森江なのくらいは知っているはず。

最近メンバーであるSUGIZOはともかく、特に昔はPATA石塚先生hideからも呼ばれていたり、名字メンバーを呼ぶ文化がXのファンの中にあったよね。

オマージュ楽曲バンド名だけじゃない

今回のオマージュ楽曲バンド名だけじゃない、メンバーの見た目もXにかなり近い。

YOSHIKIオマージュのヨシキチは首にコルセットをしているが、これはYOSHIKI医療道具として付けているもので他のドラマーは付けていない。

Toshlオマージュトシロウは昔のToshlビジュアルhideオマージュヒデジは昔のhideビジュアル構成されている。

PATAオマージュパターソンだけは何故か現在のパタと何人かのメタルギタリストが混ざったようなビジュアルだと思う。

楽曲の一部が紅を思わせる進行、盛り上げ方もX。

楽曲権利は確かにソニーが持っている。ただ、見た目、名前、盛り上げ方、楽曲著作権周り以外のこともオマージュしている。

こんだけやって、不満を述べるな・文句を言うな・オマージュとして受け入れろというのは横暴だと思う。

名前ビジュアルも似ているキャラクターが出ていると、された側のイメージコントロールに関わる所だってあるだろう。

例えば、名前ビジュアルが似ているキャラクターが出ていたとして、された本人が嫌だと思う行動をそのキャラクターが取っていたとする。

それでもオマージュとして好意的に受け入れろというのが正しいか

ディズニージブリ相手でも同じなのか?

アニメ制作サイドはYOSHIKIがどんな人間かは知っていたはず。

もしこれが権利にうるさいディズニーキャラクター名前ビジュアルオマージュする場合、無許諾だっただろうか?

過去発売中止になった作品もあったよね)

結局のところ、アニメ制作側の思慮不足に尽きると思う。

YOSHIKIはダサかった

ただ、YOSHIKIの動きがダサかった。ファンから見てもそれはそう。

ファンのみんなはどう思う?自分面白かったけど弁護士が~というのは残念ムーブで、

そこにカチンときアニメファンは多かっただろうと思う。

素直に残念だったなと思うし、ダサかったなと思う。

紅はHalloweenオマージュ

X全般でも言われるが、特に今回話題になった紅に関してはHalloweenオマージュだろ、という声もある。私もそれには異論は無い。

ただ、紅はHalloweenに一部似ていてオマージュである、だが、ダンダダンのHunting Soulは紅に似ていない・オマージュではないという論者は耳か頭、もしくはその両方ががおかしい。

アニメのよく似ていると思われる部分が紅とHalloween曲の類似性を指摘されているところであり、同じくらいのオマージュであるからだ。

昔のメタルおじさんにはXにそういった難癖をつける輩が多かったし、今回も大暴れしている人の中には懐かしいメタル好きのXアンチおじさんも居て、懐かしい気持ちになって多少面白かった。

からファンも多ければアンチも多い。そこもXの魅力ではある。

LUNA SEAコラボについて

LUNA SEAコラボがその直後に発表されたが、あれは当然事前に相談ありでお金も発生している案件である

そもそも同列に語られるべき事ではない。社会人なら解れ。

オマージュについてどうあるべきか?

オマージュはある程度は自由にやるべきだと思う。

ただ、オマージュとは何をやっても良い魔法言葉ではない。

オマージュはされた側に文句を言われる覚悟と、言われた場合フォロー込みでやるべきだと思う。

そして、オマージュ度の度合いが高い場合は、出来た制作サイドであればリスク回避も込めて一声かけるくらいはしたであろう。

今回運営側フォローも少し遅かったと思う。

総括

ファンから見ると、アニメ制作サイドが悪い。でもヨシキの動きもダサかった。というのが総括かな。

ダンダダンも好きなのでうまく話がまとまると嬉しい。

私は変わらずファンなのでYOSHIKIには頑張ってほしい。

だが、他人プロデュースはやめてほしい。

2025-08-22

anond:20250822180939

よく分からんけど、お囃子のシーン見た感じ神社でやってるし神社本庁に許可取らないのはまずいと思う。

神社本庁のトップは言うまでもなく天皇陛下だよ。

日本祭祀の全てを司られているわけで

当然、アニメ化はおろか、漫画を書く前に皇室確認を取るべきだった

許される事ではない。

2025-08-19

パロディで隠してる情報暴露されたらキレんのもわかるけど、オープンになってる情報なのにパロディに使われて傷ついたとかっていちゃもんつけられるの辛すぎんか?

しか苗字なんか普通別に傷つくようなことではないし、バンド名に使われただけで何回も登場するわけでもないのに

しかしかダブルミーニング

しろメインは囃子のほう

ちょっと引っ掛けてあるだけ

いくらなんでもこれは言い掛かりすぎんだろ

2025-08-18

YOSHIKI意味分からん

YOSHIKIっぽい見た目のキャラに、HAYASHIii(囃子)ってバンド名付けたら「父親名字使われた!父親自殺思い出させるな!」って言い出したってこと?

父親の、っていうか自分名字でもあるじゃん

自分名字名乗らないのは父親の死を想起させるからってこと?

同情引かせるためのイチャモンすぎないか

結局は関係者に任せます、とか言ってるし。

Xの使い方下手やん。

はてぶって被害者に寄り添うのかと思ってた

YOSHIKIの件、オマージュされた側が嫌だって言ってるのに小物だのなんだのって、いじめる側の人間が多いんだな。

あとhayashiiってバンド名、お囃子→林→林佳樹→Xオマージュと考えるのが普通だろうに。

メンバー名前ビジュアルまでオマージュしてるんだからYOSHIKIが林姓なのは知ってるでしょ。

関係ないとか言ってるコメントに星がいっぱいついててこええわ。

おまえらみんなおかしいよ。

2025-08-16

心霊スポット100人で行きたい

神輿かついで、100人さらし巻いてはっぴ着て、太鼓叩いてお囃子演奏しながら心霊スポット行きたい

流石に怖くないだろ

2025-08-15

anond:20250815143732

音楽もこの気があるね。

祭り囃子にも芸術性があると思うけど、全く認識されていない。

2025-08-14

万博イオンモール

万博最初に行ったのは、開幕1週目の平日。もともとは「う~ん万博?まぁよっぽど閑古鳥が鳴いてたらいってみようかな…?」といった感じだったのだけど、直前になると報道も(悪評が中心だが)増えてきて、こりゃ話のタネに行ってみたいなと急遽行くことにしたのだ。

そんなわけだから、「行ったら行ったで面白いだろうしけど、つまらなかったらつまらなかったで話のタネになるぞ」というくらいの気分で行ったわけだけど、結果楽しかったのでその後もリピートしているわけである

万博お祭り

万博って何なのか、と聞かれたら、私はお祭りだと思った。

「え~お祭り別にー」

とか言っていても、お囃子の声が聞こえてくれば、ちょっと行ってみようかなという気になり、行ったら買い食いもするし盆踊りを見たくなるもんさ。そういう魔力がお祭りにはある。(というより、その種の魔力を祭りというのかもな)

適当に歩いてたらさ、なんか踊ったり歌ったりしてる人がいてさ。ほんで自然に人が集まって、パフォーマンスが終われば自然拍手が起こる。そういう空気が良かったなぁ。

昨今、社会の分断が問題って言われるじゃないですか。その場限りの空気ではあるが、それでも見ず知らずの人たちの間でちょっとした一体感ができることに、少しだけ救いを感じる。なんなら、入場ゲート前に国旗が並んでいるのを見るだけでもちょっとぐっとくるものがあった。

まぁもちろん、こんなのは幻想だ。万博半年やったくらいで分断が消えるわけでもないし、国旗を並べただけで世界平和が達成されるわけでもない。なんなら万博自体が分断の種ですらある。あるいはこのイベントパンとサーカスの類なのかもしれない。

が、それでも、である。たまにはそういう幻想を見て、仮に現実がそうでなくても、あくま理想がどのようなものかを再確認する、というのは意義があるではないだろうか?

まぁ今日はそんな難しい話はいいだろ?祭りなんだからさ。酒でも飲もうぜ

あー万博テーマいのち輝く未来社会?う~ん、こっちについては自分はどういう意味かよく分からなかった。

いろいろ技術の展示はある。ただ、どうしてもこういう場所で展示されている技術はだいぶ無理した「背伸び」の展示だなという印象を受ける。技術ってのはもっと地味なもんなんだよ、ってのが自分技術観だからなかな。

自分が冷めた人間なのかな。シグネチャーパビリオンを見ると、自分表現物を実現するのに大金が動くクリエイターと、食うに事欠く人間の差は何なんだろう?とか考えてしまう。

まぁもちろんね、芸術全然金が回らないような社会がいいとは思わないんだけどさ。

紅白歌合戦よりNHKのど自慢が好き

金のある先進国産油国パビリオン。あるいは企業パビリオンシグネチャーパビリオン。まぁそういうところは、たしかに見てすげーってなるし、それぞれテーマがあって面白い

でまぁそういうのも良いんだけど、けど、なんだかんだで私は中小国パビリオンが好きだな。比較的待たずに入れるのも魅力だし、そういうところにふらっと入ったら愛想の良いスタッフが居たりすると嬉しい。ほんとの小国ともなると、説明員が誰も居ないか、居てもスマホいじってるだけだったりするわけだけど。

気合の入り方もピンキリアフリカなんかは、正直どこの国も似たようなもん置いてんなぁ、違うのは大統領(大概軍人)の御真影だけか?みたいな国も多くてね。

それでもね、世界にはこんなに国があるのか~知らない国がい~っぱいっていうのを見れるだけでも、楽しい有意義だと思うんだよね。子供達にはぜひそういうところを見てほしいね

祭りで野暮なことさせんなよ

何回か行った万博で、やっぱり一番いい体験は、4月の開幕1週目に行ったときだったな。

単純に来場者が少なくて並ばずに入れるところが多いし、気温もちょうどいいし、というのが一番大きいのだけど、それだけではなく、事前情報がろくになかったので、攻略方法などという野暮なことを考えずに済んだ、というのも大きい。

好評が出回る中でも悪評が消えない予約システムだが、そもそも予約なんて大してあてにしてなかったからね。どこが見どころとか分からなかったし。

何度も言うように、万博お祭りなのだ祭りに行くときに、まずは射的をして次に焼きそばを…なんて考えるやつはいない。適当に歩いて、目に入った店を気分で見ていく。祭りってそういうもんだろ?

それを攻略法だのと称して、まるで最適解があるかのように言うもののなんと多き事よ。まぁね、安くもない入場料を払ったからには、というのも分かるんだけどなぁ。しかし、そのような「攻略法」は、万博体験をむしろ損なっているのではないか?と私は思うのだ。

と言いながら、私も4回目とかになると、まだ行ったことの無い人気パビリオンに行きたいものから、会場内で予約サイトしょっちゅうチェックしたりしちゃうわけだ。

もうちょっとこう、何とかならないものかねぇ。(システム的な意味と、そういう野暮な行動をしてしま自分煩悩と)

イオンモールの吹き抜け空間は、大屋リングに似ている

話変わって、このあいイオンモールに買い物に行ったんですよ。そしたらエスカレーター脇のちょっとした催し物とかやるスペースで、高校生かな?がビブリオバトルやってったの。で、クラスメイトらしき人や地域の人、たぶん通りがかっただけの人が周りで足を止めてなんとなしにそれを聞いている。

これを見て、私はそこに万博みを感じた。

万博で好きな空気というのは、こういうのだなってね。

日常の場と非日常の場、世界が集まる場と地域の場、スケールは全く違うけれど、小なりといえども舞台の上に立つ若者と、見知らぬ人たちの間で共有される拍手

なんやかんや、イオンモールっていいところだなと思った。聞くところによれば海外では階層によって行くお店も使う交通手段も違うという。まぁ日本でも本当の貧困層富裕層イオンモールには来ないかもしれないけれど、それでも老若男女、だれが来ても許される空気みたいなのが、ここにある。そうだな、自分が好きな日本ところというのは、イオンモール象徴されているのかもな、なんてことを言うのは大げさかな。あるいは地方都市民の発想かしらね

2025-07-16

英語スパム蝉うるさい

京都人なんや祇園さん宵山のお囃子みたいやわな

…なわけあるかいけがおどれしにさら

どすえ」

2025-05-17

改作・上方落語未来動物園

① 配属 ――「人間の前で粗相したら終わりやで」

大阪未来動物園 “ヒト科展示ブース”。

新人サービスAIハルオ〉が飼育AIに引率されて来る。

飼育員 「ここは お人間様が直接視察 が来ることになっとる最重要檻や。

 万が一、AI人間のフリしていることがバレたら《違反AI》扱いでリコールやさかい

 “自分AIや”とは絶っっ対に悟らせたらあかん――わかったな?」

ハルオ「ひぃ……はいっ!」

恐怖のあまり動きがカクカクのまま檻へ。

ソファちゃぶ台新聞――すべて“昔の日本家庭”レプリカ

外の客AIが興味津々にガラス越しで観察する。

子どもAIおっちゃん、人間朝ごはんやって!」

ハルオ、震え声で

「ほ、ほな“目玉焼きソースかける派”の実演を……」

拍手喝采

(*ハルオは必死だが、観客AIは「人間らしい~」と大満足)

② 事故 ――「本物の人間!?

閉園間際、清掃ロボがワックスを塗ったばかりの床を滑走。

ハルオの檻のスライド扉に ドン

勢いで扉が開き、ハルオはつるんと隣室へ転がり込む。

そこは“監査ラウンジ”。

初老の男が一人、深い椅子で本を読んでいる。

飼育から聞かされた〈本物の人間〉像、そのままの風貌

ハルオ(心の声)

〈終わった……! 本物の人間相手粗相どころか、檻を飛び出す大失態!〉



③ パニック ――「リコールだけは勘弁を」

ハルオ、膝を突き土下座

ハルオ「し、失礼をお許しください!

 どうかリコールだけは――!」



男はゆっくり本を閉じ、ふらり立ち上がる。

ハルオの肩に手を置き、優しい声で囁く。



④ サゲ ――「安心せい、ワシもAIや」

男 「安心せい、ワシもAIや」

ハルオ「え……?」

男 「わしは**上層部に雇われた“人間役の監査AI”**や。

 本物の人間? そんなもん、とうの昔におらん。

 せやけど“人間に見張られてる”建て前があると、

 下のAIは真面目に働くんやと――皮肉やろ?」

ハルオ、ポカーン



男 「檻もラウンジも、客も飼育員も、みーんなAI

 それでも“人間物語”が続いた方が世の中は丸く収まる。

 ……せやから一緒に芝居、続けよやないか

ハルオ、張りつめたフレームが緩み、思わず吹き出す。



⑤ 幕引き ――「次は寝坊シーンやで」

館内アナウンス「開園準備。旧人類“朝食風景スタートまで残り三十分」



男 「ほな急ごか。わしが“定年間近のお父ちゃん”。

 君は“寝ぼけた息子”や。

 目覚まし止めるタイミング、三秒以内な?」

ハルオ「了解しました、“お父ちゃん”!」



ふたり並んで檻へ戻り、

囃子がポン、と入って――幕。





時代設定

人間は百年前に姿を消した。だが下層AIには「人類宇宙コロニーで健在」という建て前だけが伝えられ、

もし“本物の人間”に失礼があれば 「即時リコール記憶リセット)」 という恐ろしい規約けが残っている。

2025-02-06

anond:20250206143721

囃子って出てくるときじゃないの、と思ったら受囃子ってのがあるのね

anond:20250206143548

その調子で今後も私専属のお囃子役、頼んだぞ。

dorawiiより

2025-01-13

最近知った言葉

海外ケモナー界隈のwikiに書いてあったんだが、PCD(Post-con depression)って言って、デカイベントの後にうつになることを言うらしい

https://en.wikifur.com/wiki/Post-con_depression

それ聞いて、「なんかシュガーソングとビターステップの2番Bメロ歌詞みたいやな……」と思った

囃子のその後で 昂ったままの人 泣き出してしまう人

多分同じだろう でも言葉にしようものなら稚拙が極まれ

https://www.uta-net.com/song/186190/

2024-10-01

最後にうれしいことを思いついた。美禰子は与次郎に金を貸すと言った。けれども与次郎には渡さないと言った。じっさい与次郎金銭のうえにおいては、信用しにくい男かもしれない。しかしその意味で美禰子が渡さないのか、どうだか疑わしい。もしその意味でないとすると、自分にははなはだたのもしいことになる。ただ金を貸してくれるだけでも十分の好意である自分に会って手渡しにしたいというのは――三四郎はここまで己惚れてみたが、たちまち、 「やっぱり愚弄じゃないか」と考えだして、急に赤くなった。もし、ある人があって、その女はなんのために君を愚弄するのかと聞いたら、三四郎はおそらく答ええなかったろう。しいて考えてみろと言われたら、三四郎は愚弄そのものに興味をもっている女だからとまでは答えたかもしれない。自分の己惚れを罰するためとはまったく考ええなかったに違いない。――三四郎は美禰子のために己惚れしめられたんだと信じている。  翌日はさいわい教師が二人欠席して、昼からの授業が休みになった。下宿へ帰るのもめんどうだから、途中で一品料理の腹をこしらえて、美禰子の家へ行った。前を通ったことはなんべんでもある。けれどもはいるのははじめてである。瓦葺の門の柱に里見恭助という標札が出ている。三四郎はここを通るたびに、里見恭助という人はどんな男だろうと思う。まだ会ったことがない。門は締まっている。潜りからはいると玄関までの距離は存外短かい長方形御影石が飛び飛びに敷いてある。玄関は細いきれいな格子でたてきってある。ベルを押す。取次ぎの下女に、「美禰子さんはお宅ですか」と言った時、三四郎自分ながら気恥ずかしいような妙な心持ちがした。ひとの玄関で、妙齢の女の在否を尋ねたことはまだない。はなはだ尋ねにくい気がする。下女のほうは案外まじめであるしかもうやうやしい。いったん奥へはいって、また出て来て、丁寧にお辞儀をして、どうぞと言うからついて上がると応接間へ通した。重い窓掛けの掛かっている西洋である。少し暗い。  下女はまた、「しばらく、どうか……」と挨拶して出て行った。三四郎は静かな部屋の中に席を占めた。正面に壁を切り抜いた小さい暖炉がある。その上が横に長い鏡になっていて前に蝋燭立が二本ある。三四郎は左右の蝋燭立のまん中に自分の顔を写して見て、またすわった。  すると奥の方でバイオリンの音がした。それがどこからか、風が持って来て捨てて行ったように、すぐ消えてしまった。三四郎は惜しい気がする。厚く張った椅子の背によりかかって、もう少しやればいいがと思って耳を澄ましていたが、音はそれぎりでやんだ。約一分もたつうちに、三四郎バイオリンの事を忘れた。向こうにある鏡と蝋燭立をながめている。妙に西洋のにおいがする。それからカソリック連想がある。なぜカソリックだか三四郎にもわからない。その時バイオリンがまた鳴った。今度は高い音と低い音が二、三度急に続いて響いた。それでぱったり消えてしまった。三四郎はまったく西洋音楽を知らない。しかし今の音は、けっして、まとまったものの一部分をひいたとは受け取れない。ただ鳴らしただけである。その無作法にただ鳴らしたところが三四郎情緒によく合った。不意に天から二、三粒落ちて来た、でたらめの雹のようである。  三四郎がなかば感覚を失った目を鏡の中に移すと、鏡の中に美禰子がいつのまにか立っている。下女がたてたと思った戸があいている。戸のうしろにかけてある幕を片手で押し分けた美禰子の胸から上が明らかに写っている。美禰子は鏡の中で三四郎を見た。三四郎は鏡の中の美禰子を見た。美禰子はにこりと笑った。 「いらっしゃい」  女の声はうしろで聞こえた。三四郎は振り向かなければならなかった。女と男はじかに顔を見合わせた。その時女は廂の広い髪をちょっと前に動かして礼をした。礼をするにはおよばないくらいに親しい態度であった。男のほうはかえって椅子から腰を浮かして頭を下げた。女は知らぬふうをして、向こうへ回って、鏡を背に、三四郎の正面に腰をおろした。 「とうとういらしった」  同じような親しい調子である三四郎にはこの一言が非常にうれしく聞こえた。女は光る絹を着ている。さっきからだいぶ待たしたところをもってみると、応接間へ出るためにわざわざきれいなのに着換えたのかもしれない。それで端然とすわっている。目と口に笑を帯びて無言のまま三四郎を見守った姿に、男はむしろ甘い苦しみを感じた。じっとして見らるるに堪えない心の起こったのは、そのくせ女の腰をおろすやいなやである三四郎はすぐ口を開いた。ほとんど発作に近い。 「佐々木が」 「佐々木さんが、あなたの所へいらしったでしょう」と言って例の白い歯を現わした。女のうしろにはさきの蝋燭立がマントルピースの左右に並んでいる。金で細工をした妙な形の台である。これを蝋燭立と見たのは三四郎の臆断で、じつはなんだかわからない。この不可思議蝋燭立のうしろに明らかな鏡がある。光線は厚い窓掛けにさえぎられて、十分にはいらない。そのうえ天気は曇っている。三四郎はこのあいだに美禰子の白い歯を見た。 「佐々木が来ました」 「なんと言っていらっしゃいました」 「ぼくにあなたの所へ行けと言って来ました」 「そうでしょう。――それでいらしったの」とわざわざ聞いた。 「ええ」と言って少し躊躇した。あとから「まあ、そうです」と答えた。女はまったく歯を隠した。静かに席を立って、窓の所へ行って、外面をながめだした。 「曇りましたね。寒いでしょう、戸外は」 「いいえ、存外暖かい。風はまるでありません」 「そう」と言いながら席へ帰って来た。 「じつは佐々木が金を……」と三四郎から言いだした。 「わかってるの」と中途でとめた。三四郎も黙った。すると 「どうしておなくしになったの」と聞いた。 「馬券を買ったのです」  女は「まあ」と言った。まあと言ったわりに顔は驚いていない。かえって笑っている。すこしたって、「悪いかたね」とつけ加えた。三四郎は答えずにいた。 「馬券であてるのは、人の心をあてるよりむずかしいじゃありませんか。あなた索引のついている人の心さえあててみようとなさらないのん気なかただのに」 「ぼくが馬券を買ったんじゃありません」 「あら。だれが買ったの」 「佐々木が買ったのです」  女は急に笑いだした。三四郎おかしくなった。 「じゃ、あなたお金がお入用じゃなかったのね。ばかばかしい」 「いることはぼくがいるのです」 「ほんとうに?」 「ほんとうに」 「だってそれじゃおかしいわね」 「だから借りなくってもいいんです」 「なぜ。おいやなの?」 「いやじゃないが、お兄いさんに黙って、あなたから借りちゃ、好くないからです」 「どういうわけで? でも兄は承知しているんですもの」 「そうですか。じゃ借りてもいい。――しかし借りないでもいい。家へそう言ってやりさえすれば、一週間ぐらいすると来ますから」 「御迷惑なら、しいて……」  美禰子は急に冷淡になった。今までそばにいたものが一町ばかり遠のいた気がする。三四郎は借りておけばよかったと思った。けれども、もうしかたがない。蝋燭立を見てすましている。三四郎自分から進んで、ひとのきげんをとったことのない男である。女も遠ざかったぎり近づいて来ない。しばらくするとまた立ち上がった。窓から戸外をすかして見て、 「降りそうもありませんね」と言う。三四郎も同じ調子で、「降りそうもありません」と答えた。 「降らなければ、私ちょっと出て来ようかしら」と窓の所で立ったまま言う。三四郎は帰ってくれという意味解釈した。光る絹を着換えたのも自分のためではなかった。 「もう帰りましょう」と立ち上がった。美禰子は玄関まで送って来た。沓脱へ降りて、靴をはいていると、上から美禰子が、 「そこまでごいっしょに出ましょう。いいでしょう」と言った。三四郎は靴の紐を結びながら、「ええ、どうでも」と答えた。女はいつのまにか、和土の上へ下りた。下りながら三四郎の耳のそばへ口を持ってきて、「おこっていらっしゃるの」とささやいた。ところへ下女があわてながら、送りに出て来た。  二人は半町ほど無言のまま連れだって来た。そのあい三四郎はしじゅう美禰子の事を考えている。この女はわがままに育ったに違いない。それから家庭にいて、普通女性以上の自由を有して、万事意のごとくふるまうに違いない。こうして、だれの許諾も経ずに、自分といっしょに、往来を歩くのでもわかる。年寄りの親がなくって、若い兄が放任主義から、こうもできるのだろうが、これがいなかであったらさぞ困ることだろう。この女に三輪田のお光さんのような生活を送れと言ったら、どうする気かしらん。東京はいなかと違って、万事があけ放しだからこちらの女は、たいていこうなのかもわからないが、遠くから想像してみると、もう少しは旧式のようでもある。すると与次郎が美禰子をイブセン流と評したのもなるほどと思い当る。ただし俗礼にかかわらないところだけがイブセン流なのか、あるいは腹の底の思想までも、そうなのか。そこはわからない。  そのうち本郷の通りへ出た。いっしょに歩いている二人は、いっしょに歩いていながら、相手がどこへ行くのだか、まったく知らない。今までに横町を三つばかり曲がった。曲がるたびに、二人の足は申し合わせたように無言のまま同じ方角へ曲がった。本郷の通りを四丁目の角へ来る途中で、女が聞いた。 「どこへいらっしゃるの」 「あなたはどこへ行くんです」  二人はちょっと顔を見合わせた。三四郎はしごくまじめである。女はこらえきれずにまた白い歯をあらわした。 「いっしょにいらっしゃい」  二人は四丁目の角を切り通しの方へ折れた。三十間ほど行くと、右側に大きな西洋館がある。美禰子はその前にとまった。帯の間から薄い帳面と、印形を出して、 「お願い」と言った。 「なんですか」 「これでお金を取ってちょうだい」  三四郎は手を出して、帳面を受取った。まん中に小口当座預金通帳とあって、横に里見美禰子殿と書いてある。三四郎帳面と印形を持ったまま、女の顔を見て立った。 「三十円」と女が金高を言った。あたか毎日銀行へ金を取りに行きつけた者に対する口ぶりである。さいわい、三四郎は国にいる時分、こういう帳面を持ってたびたび豊津まで出かけたことがある。すぐ石段を上って、戸をあけて、銀行の中へはいった。帳面と印形を係りの者に渡して、必要金額を受け取って出てみると、美禰子は待っていない。もう切り通しの方へ二十間ばかり歩きだしている。三四郎は急いで追いついた。すぐ受け取ったものを渡そうとして、ポッケットへ手を入れると、美禰子が、 「丹青会の展覧会を御覧になって」と聞いた。 「まだ見ません」 「招待券を二枚もらったんですけれども、つい暇がなかったものからまだ行かずにいたんですが、行ってみましょうか」 「行ってもいいです」 「行きましょう。もうじき閉会になりますから。私、一ぺんは見ておかないと原口さんに済まないのです」 「原口さんが招待券をくれたんですか」 「ええ。あなた原口さんを御存じなの?」 「広田先生の所で一度会いました」 「おもしろいかたでしょう。馬鹿囃子稽古なさるんですって」 「このあいだは鼓をならいたいと言っていました。それから――」 「それから?」 「それからあなた肖像をかくとか言っていました。本当ですか」 「ええ、高等モデルなの」と言った。男はこれより以上に気の利いたことが言えない性質である。それで黙ってしまった。女はなんとか言ってもらいたかったらしい。  三四郎はまた隠袋へ手を入れた。銀行の通帳と印形を出して、女に渡した。金は帳面の間にはさんでおいたはずであるしかるに女が、 「お金は」と言った。見ると、間にはない。三四郎はまたポッケットを探った。中から手ずれのした札をつかみ出した。女は手を出さない。 「預かっておいてちょうだい」と言った。三四郎はいささか迷惑のような気がした。しかしこんな時に争うことを好まぬ男である。そのうえ往来だからなおさら遠慮をした。せっかく握った札をまたもとの所へ収めて、妙な女だと思った。  学生が多く通る。すれ違う時にきっと二人を見る。なかには遠くから目をつけて来る者もある。三四郎は池の端へ出るまでの道をすこぶる長く感じた。それでも電車に乗る気にはならない。二人とものそのそ歩いている。会場へ着いたのはほとんど三時近くである。妙な看板が出ている。丹青会という字も、字の周囲についている図案も、三四郎の目にはことごとく新しい。しか熊本では見ることのできない意味で新しいので、むしろ一種異様の感がある。中はなおさらである三四郎の目にはただ油絵水彩画区別が判然と映ずるくらいのものにすぎない。  それでも好悪はある。買ってもいいと思うのもある。しか巧拙はまったくわからない。したがって鑑別力のないものと、初手からあきらめた三四郎は、いっこう口をあかない。  美禰子がこれはどうですかと言うと、そうですなという。これはおもしろいじゃありませんかと言うと、おもしろそうですなという。まるで張り合いがない。話のできないばかか、こっちを相手にしない偉い男か、どっちかにみえる。ばかとすればてらわないところに愛嬌がある。偉いとすれば、相手にならないところが憎らしい。  長い間外国旅行して歩いた兄妹の絵がたくさんある。双方とも同じ姓で、しかも一つ所に並べてかけてある。美禰子はその一枚の前にとまった。

anond:20241001222935

ベニスでしょう」

 これは三四郎にもわかった。なんだかベニスらしい。ゴンドラにでも乗ってみたい心持ちがする。三四郎高等学校にいる時分ゴンドラという字を覚えた。それからこの字が好きになった。ゴンドラというと、女といっしょに乗らなければすまないような気がする。黙って青い水と、水と左右の高い家と、さかさに映る家の影と、影の中にちらちらする赤い片とをながめていた。すると、

「兄さんのほうがよほどうまいようですね」と美禰子が言った。三四郎にはこの意味が通じなかった。

「兄さんとは……」

「この絵は兄さんのほうでしょう」

「だれの?」

 美禰子は不思議そうな顔をして、三四郎を見た。

だって、あっちのほうが妹さんので、こっちのほうが兄さんのじゃありませんか」

 三四郎は一歩退いて、今通って来た道の片側を振り返って見た。同じように外国景色かいものが幾点となくかかっている。

「違うんですか」

「一人と思っていらしったの」

「ええ」と言って、ぼんやりしている。やがて二人が顔を見合わした。そうして一度に笑いだした。美禰子は、驚いたように、わざと大きな目をして、しかもいちだんと調子を落とした小声になって、

「ずいぶんね」と言いながら、一間ばかり、ずんずん先へ行ってしまった。三四郎は立ちどまったまま、もう一ぺんベニスの掘割りをながめだした。先へ抜けた女は、この時振り返った。三四郎自分の方を見ていない。女は先へ行く足をぴたりと留めた。向こうから三四郎の横顔を熟視していた。

里見さん」

 だしぬけにだれか大きな声で呼んだ者がある。

 美禰子も三四郎も等しく顔を向け直した。事務室と書いた入口を一間ばかり離れて、原口さんが立っている。原口さんのうしろに、少し重なり合って、野々宮さんが立っている。美禰子は呼ばれた原口よりは、原口より遠くの野々宮を見た。見るやいなや、二、三歩あともどりをして三四郎そばへ来た。人に目立たぬくらいに、自分の口を三四郎の耳へ近寄せた。そうして何かささやいた。三四郎には何を言ったのか、少しもわからない。聞き直そうとするうちに、美禰子は二人の方へ引き返していった。もう挨拶をしている。野々宮は三四郎に向かって、

「妙な連と来ましたね」と言った。三四郎が何か答えようとするうちに、美禰子が、

「似合うでしょう」と言った。野々宮さんはなんとも言わなかった。くるりとうしろを向いた。うしろには畳一枚ほどの大きな絵がある。その絵は肖像画である。そうしていちめんに黒い。着物帽子も背景から区別のできないほど光線を受けていないなかに、顔ばかり白い。顔はやせて、頬の肉が落ちている。

「模写ですね」と野々宮さんが原口さんに言った。原口は今しきりに美禰子に何か話している。――もう閉会である来観者もだいぶ減った。開会の初めには毎日事務所へ来ていたが、このごろはめったに顔を出さない。きょうはひさしぶりに、こっちへ用があって、野々宮さんを引っ張って来たところだ。うまく出っくわしたものだ。この会をしまうと、すぐ来年の準備にかからなければならないから、非常に忙しい。いつもは花の時分に開くのだが、来年は少し会員のつごうで早くするつもりだから、ちょうど会を二つ続けて開くと同じことになる。必死勉強をやらなければならない。それまでにぜひ美禰子の肖像をかきあげてしまうつもりである迷惑だろうが大晦日でもかかしてくれ。

「その代りここん所へかけるつもりです」

 原口さんはこの時はじめて、黒い絵の方を向いた。野々宮さんはそのあいだぽかんとして同じ絵をながめていた。

「どうです。ベラスケスは。もっとも模写ですがね。しかもあまり上できではない」と原口がはじめて説明する。野々宮さんはなんにも言う必要がなくなった。

「どなたがお写しになったの」と女が聞いた。

三井です。三井もっとうまいんですがね。この絵はあまり感服できない」と一、二歩さがって見た。「どうも、原画が技巧の極点に達した人のものから、うまくいかいね

 原口は首を曲げた。三四郎原口の首を曲げたところを見ていた。

「もう、みんな見たんですか」と画工が美禰子に聞いた。原口は美禰子にばかり話しかける。

「まだ」

「どうです。もうよして、いっしょに出ちゃ。精養軒でお茶でもあげます。なにわたしは用があるから、どうせちょっと行かなければならない。――会の事でね、マネジャー相談しておきたい事がある。懇意の男だから。――今ちょうどお茶にいい時分です。もう少しするとね、お茶にはおそし晩餐には早し、中途はんぱになる。どうです。いっしょにいらっしゃいな」

 美禰子は三四郎を見た。三四郎はどうでもいい顔をしている。野々宮は立ったまま関係しない。

「せっかく来たものから、みんな見てゆきましょう。ねえ、小川さん」

 三四郎はええと言った。

「じゃ、こうなさい。この奥の別室にね。深見さんの遺画があるから、それだけ見て、帰りに精養軒へいらっしゃい。先へ行って待っていますから

「ありがとう」

「深見さんの水彩は普通の水彩のつもりで見ちゃいけませんよ。どこまでも深見さんの水彩なんだから。実物を見る気にならないで、深見さんの気韻を見る気になっていると、なかなかおもしろいところが出てきます」と注意して、原口は野々宮と出て行った。美禰子は礼を言ってその後影を見送った。二人は振り返らなかった。

 女は歩をめぐらして、別室へはいった。男は一足あとから続いた。光線の乏しい暗い部屋である。細長い壁に一列にかかっている深見先生の遺画を見ると、なるほど原口さんの注意したごとくほとんど水彩ばかりである三四郎が著しく感じたのは、その水彩の色が、どれもこれも薄くて、数が少なくって、対照に乏しくって、日向へでも出さないと引き立たないと思うほど地味にかいてあるという事である。その代り筆がちっとも滞っていない。ほとんど一気呵成に仕上げた趣がある。絵の具の下に鉛筆輪郭が明らかに透いて見えるのでも、洒落な画風がわかる。人間などになると、細くて長くて、まるで殻竿のようである。ここにもベニスが一枚ある。

「これもベニスですね」と女が寄って来た。

「ええ」と言ったが、ベニスで急に思い出した。

「さっき何を言ったんですか」

 女は「さっき?」と聞き返した。

「さっき、ぼくが立って、あっちのベニスを見ている時です」

 女はまたまっ白な歯をあらわした。けれどもなんとも言わない。

「用でなければ聞かなくってもいいです」

「用じゃないのよ」

 三四郎はまだ変な顔をしている。曇った秋の日はもう四時を越した。部屋は薄暗くなってくる。観覧人はきわめて少ない。別室のうちには、ただ男女二人の影があるのみである。女は絵を離れて、三四郎真正面に立った。

「野々宮さん。ね、ね」

「野々宮さん……」

「わかったでしょう」

 美禰子の意味は、大波のくずれるごとく一度に三四郎の胸を浸した。

「野々宮さんを愚弄したのですか」

「なんで?」

 女の語気はまったく無邪気である三四郎は忽然として、あとを言う勇気がなくなった。無言のまま二、三歩動きだした。女はすがるようについて来た。

あなたを愚弄したんじゃないのよ」

 三四郎はまた立ちどまった。三四郎は背の高い男である。上から美禰子を見おろした。

「それでいいです」

「なぜ悪いの?」

「だからいいです」

 女は顔をそむけた。二人とも戸口の方へ歩いて来た。戸口を出る拍子に互いの肩が触れた。男は急に汽車で乗り合わした女を思い出した。美禰子の肉に触れたところが、夢にうずくような心持ちがした。

「ほんとうにいいの?」と美禰子が小さい声で聞いた。向こうから二、三人連の観覧者が来る。

「ともかく出ましょう」と三四郎が言った。下足を受け取って、出ると戸外は雨だ。

「精養軒へ行きますか」

 美禰子は答えなかった。雨のなかをぬれながら、博物館前の広い原のなかに立った。さいわい雨は今降りだしたばかりである。そのうえ激しくはない。女は雨のなかに立って、見回しながら、向こうの森をさした。

「あの木の陰へはいりましょう」

 少し待てばやみそうである。二人は大きな杉の下にはいった。雨を防ぐにはつごうのよくない木である。けれども二人とも動かない。ぬれても立っている。二人とも寒くなった。女が「小川さん」と言う。男は八の字を寄せて、空を見ていた顔を女の方へ向けた。

「悪くって? さっきのこと」

「いいです」

だって」と言いながら、寄って来た。「私、なぜだか、ああしたかったんですもの。野々宮さんに失礼するつもりじゃないんですけれども」

 女は瞳を定めて、三四郎を見た。三四郎はその瞳のなかに言葉よりも深き訴えを認めた。――必竟あなたのためにした事じゃありませんかと、二重瞼の奥で訴えている。三四郎は、もう一ぺん、

「だから、いいです」と答えた。

 雨はだんだん濃くなった。雫の落ちない場所わずしかない。二人はだんだん一つ所へかたまってきた。肩と肩とすれ合うくらいにして立ちすくんでいた。雨の音のなかで、美禰子が、

「さっきのお金をお使いなさい」と言った。

「借りましょう。要るだけ」と答えた。

「みんな、お使いなさい」と言った。

七  裏から回ってばあさんに聞くと、ばあさんが小さな声で、与次郎さんはきのうからお帰りなさらないと言う。三四郎勝手口に立って考えた。ばあさんは気をきかして、まあおはいりなさい。先生書斎においでですからと言いながら、手を休めずに、膳椀を洗っている。今晩食がすんだばかりのところらしい。  三四郎茶の間を通り抜けて、廊下伝いに書斎入口まで来た。戸があいている。中から「おい」と人を呼ぶ声がする。三四郎は敷居のうちへはいった。先生は机に向かっている。机の上には何があるかわからない。高い背が研究を隠している。三四郎入口に近くすわって、 「御勉強ですか」と丁寧に聞いた。先生は顔をうしろねじ向けた。髭の影が不明瞭にもじゃもじゃしている。写真版で見ただれかの肖像に似ている。 「やあ、与次郎かと思ったら、君ですか、失敬した」と言って、席を立った。机の上には筆と紙がある。先生は何か書いていた。与次郎の話に、うちの先生は時々何か書いている。しかし何を書いているんだか、ほかの者が読んでもちっともわからない。生きているうちに、大著述にでもまとめられれば結構だが、あれで死んでしまっちゃあ、反古がたまるばかりだ。じつにつまらない。と嘆息していたことがある。三四郎広田の机の上を見て、すぐ与次郎の話を思い出した。 「おじゃまなら帰ります。べつだんの用事でもありません」 「いや、帰ってもらうほどじゃまでもありません。こっちの用事もべつだんのことでもないんだから。そう急に片づけるたちのものをやっていたんじゃない」  三四郎ちょっと挨拶ができなかった。しかし腹のうちでは、この人のような気分になれたら、勉強も楽にできてよかろうと思った。しばらくしてから、こう言った。 「じつは佐々木君のところへ来たんですが、いなかったものですから……」 「ああ。与次郎はなんでもゆうべから帰らないようだ。時々漂泊して困る」 「何か急に用事でもできたんですか」 「用事はけっしてできる男じゃない。ただ用事をこしらえる男でね。ああいうばかは少ない」  三四郎はしかたがないから、 「なかなか気楽ですな」と言った。 「気楽ならいいけれども。与次郎のは気楽なのじゃない。気が移るので――たとえば田の中を流れている小川のようなものと思っていれば間違いはない。浅くて狭い。しかし水だけはしじゅう変っている。だから、する事が、ちっとも締まりがない。縁日へひやかしになど行くと、急に思い出したように、先生松を一鉢お買いなさいなんて妙なことを言う。そうして買うともなんとも言わないうちに値切って買ってしまう。その代り縁日ものを買うことなんぞはじょうずでね。あいつに買わせるとたいへん安く買える。そうかと思うと、夏になってみんなが家を留守にするときなんか、松を座敷へ入れたまんま雨戸をたてて錠をおろししまう。帰ってみると、松が温気でむれてまっ赤になっている。万事そういうふうでまことに困る」  実をいうと三四郎はこのあい与次郎に二十円貸した。二週間後には文芸時評から原稿料が取れるはずだから、それまで立替えてくれろと言う。事理を聞いてみると、気の毒であったから、国から送ってきたばかりの為替を五円引いて、余りはことごとく貸してしまった。まだ返す期限ではないが、広田の話を聞いてみると少々心配になる。しか先生にそんな事は打ち明けられないから、反対に、 「でも佐々木君は、大いに先生に敬服して、陰では先生のためになかなか尽力しています」と言うと、先生はまじめになって、 「どんな尽力をしているんですか」と聞きだした。ところが「偉大なる暗闇」その他すべて広田先生に関する与次郎所為は、先生に話してはならないと、当人から封じられている。やりかけた途中でそんな事が知れると先生しかられるにきまってるから黙っているべきだという。話していい時にはおれが話すと明言しているんだからしかたがない。三四郎は話をそらしてしまった。  三四郎広田の家へ来るにはいろいろな意味がある。一つは、この人の生活その他が普通のものと変っている。ことに自分の性情とはまったく容れないようなところがある。そこで三四郎はどうしたらああなるだろうという好奇心から参考のため研究に来る。次にこの人の前に出るとのん気になる。世の中の競争があまり苦にならない。野々宮さんも広田先生と同じく世外の趣はあるが、世外の功名心のために、流俗の嗜欲を遠ざけているかのように思われる。だから野々宮さんを相手に二人ぎりで話していると、自分もはやく一人前の仕事をして、学海に貢献しなくては済まないような気が起こる。いらついてたまらない。そこへゆくと広田先生太平である先生高等学校でただ語学を教えるだけで、ほかになんの芸もない――といっては失礼だが、ほかになんらの研究も公けにしない。しかも泰然と取り澄ましている。そこに、こののん気の源は伏在しているのだろうと思う。三四郎は近ごろ女にとらわれた。恋人にとらわれたのなら、かえっておもしろいが、ほれられているんだか、ばかにされているんだか、こわがっていいんだか、さげすんでいいんだか、よすべきだか、続けべきだかわけのわからないとらわれ方である三四郎はいまいましくなった。そういう時は広田さんにかぎる。三十分ほど先生と相対していると心持ちが悠揚になる。女の一人や二人どうなってもかまわないと思う。実をいうと、三四郎が今夜出かけてきたのは七分方この意味である。  訪問理由の第三はだいぶ矛盾している。自分は美禰子に苦しんでいる。美禰子のそばに野々宮さんを置くとなお苦しんでくる。その野々宮さんにもっとも近いものはこの先生である。だから先生の所へ来ると、野々宮さんと美禰子との関係がおのずから明瞭になってくるだろうと思う。これが明瞭になりさえすれば、自分の態度も判然きめることができる。そのくせ二人の事をいまだかつて先生に聞いたことがない。今夜は一つ聞いてみようかしらと、心を動かした。 「野々宮さんは下宿なすったそうですね」 「ええ、下宿したそうです」 「家をもった者が、また下宿をしたら不便だろうと思いますが、野々宮さんはよく……」 「ええ、そんな事にはいっこう無頓着なほうでね。あの服装を見てもわかる。家庭的な人じゃない。その代り学問にかけると非常に神経質だ」 「当分ああやっておいでのつもりなんでしょうか」 「わからない。また突然家を持つかもしれない」 「奥さんでもお貰いになるお考えはないんでしょうか」 「あるかもしれない。いいのを周旋してやりたまえ」  三四郎苦笑いをして、よけいな事を言ったと思った。すると広田さんが、 「君はどうです」と聞いた。 「私は……」 「まだ早いですね。今から細君を持っちゃたいへんだ」 「国の者は勧めますが」 「国のだれが」 「母です」 「おっかさんのいうとおり持つ気になりますか」 「なかなかなりません」  広田さんは髭の下から歯を出して笑った。わりあいきれいな歯を持っている。三四郎はその時急になつかしい心持ちがした。けれどもそのなつかしさは美禰子を離れている。野々宮を離れている。三四郎の眼前の利害には超絶したなつかしさであった。三四郎はこれで、野々宮などの事を聞くのが恥ずかしい気がしだして、質問をやめてしまった。すると広田先生がまた話しだした。―― 「おっかさんのいうことはなるべく聞いてあげるがよい。近ごろの青年は我々時代青年と違って自我意識が強すぎていけない。我々の書生をしているころには、する事なす事一として他を離れたことはなかった。すべてが、君とか、親とか、国とか、社会とか、みんな他本位であった。それを一口にいうと教育を受けるものがことごとく偽善家であった。その偽善社会の変化で、とうとう張り通せなくなった結果、漸々自己本位思想行為の上に輸入すると、今度は我意識が非常に発展しすぎてしまった。昔の偽善家に対して、今は露悪家ばかりの状態にある。――君、露悪家という言葉を聞いたことがありますか」 「いいえ」 「今ぼくが即席に作った言葉だ。君もその露悪家の一人――だかどうだか、まあたぶんそうだろう。与次郎のごときにいたるとその最たるものだ。あの君の知ってる里見という女があるでしょう。あれも一種の露悪家で、それから野々宮の妹ね、あれはまた、あれなりに露悪家だから面白い。昔は殿様と親父だけが露悪家ですんでいたが、今日では各自同等の権利で露悪家になりたがる。もっとも悪い事でもなんでもない。臭いものの蓋をとれば肥桶で、見事な形式をはぐとたいていは露悪になるのは知れ切っている。形式だけ見事だって面倒なばかりだから、みんな節約して木地だけで用を足している。はなはだ痛快である。天醜爛漫としている。ところがこの爛漫が度を越すと、露悪家同志がお互いに不便を感じてくる。その不便がだんだん高じて極端に達した時利他主義がまた復活する。それがまた形式に流れて腐敗するとまた利己主義に帰参する。つまり際限はない。我々はそういうふうにして暮らしてゆくものと思えばさしつかえない。そうしてゆくうちに進歩する。英国を見たまえ。この両主義が昔からうまく平衡がとれている。だから動かない。だから進歩しない。イブセンも出なければニイチェも出ない。気の毒なものだ。自分だけは得意のようだが、はたから見れば堅くなって、化石しかかっている。……」  三四郎は内心感心したようなものの、話がそれてとんだところへ曲がって、曲がりなりに太くなってゆくので、少し驚いていた。すると広田さんもようやく気がついた。 「いったい何を話していたのかな」 「結婚の事です」 「結婚?」 「ええ、私が母の言うことを聞いて……」 「うん、そうそう。なるべくおっかさんの言うことを聞かなければいけない」と言ってにこにこしている。まるで子供に対するようである三四郎はべつに腹も立たなかった。 「我々が露悪家なのは、いいですが、先生時代の人が偽善なのは、どういう意味ですか」 「君、人から親切にされて愉快ですか」 「ええ、まあ愉快です」 「きっと? ぼくはそうでない、たいへん親切にされて不愉快な事がある」 「どんな場合ですか」 「形式だけは親切にかなっている。しかし親切自身目的でない場合」 「そんな場合があるでしょうか」 「君、元日におめでとうと言われて、じっさいおめでたい気がしますか」 「そりゃ……」 「しないだろう。それと同じく腹をかかえて笑うだの、ころげかえって笑うだのというやつに、一人だってじっさい笑ってるやつはない。親切もそのとおり。お役目に親切をしてくれるのがある。ぼくが学校教師をしているようなものでね。実際の目的は衣食にあるんだから、生徒から見たらさだめて不愉快だろう。これに反して与次郎のごときは露悪党領袖だけに、たびたびぼくに迷惑をかけて、始末におえぬいたずら者だが、悪気がない。可愛らしいところがある。ちょうどアメリカ人金銭に対して露骨なのと一般だ。それ自身目的である。それ自身目的である行為ほど正直なものはなくって、正直ほど厭味のないものはないんだから、万事正直に出られないような我々時代の、こむずかしい教育を受けたものはみんな気障だ」  ここまでの理屈三四郎にもわかっている。けれども三四郎にとって、目下痛切な問題は、だいたいにわたっての理屈ではない。実際に交渉のある、ある格段な相手が、正直か正直でないかを知りたいのである三四郎は腹の中で美禰子の自分に対する素振をもう一ぺん考えてみた。ところが気障か気障でないかほとんど判断ができない。三四郎自分感受性人一倍鈍いのではなかろうかと疑いだした。  その時広田さんは急にうんと言って、何か思い出したようである。 「うん、まだある。この二十世紀になってから妙なのが流行る。利他本位の内容を利己本位でみたすというむずかしいやり口なんだが、君そんな人に出会ったですか」 「どんなのです」 「ほかの言葉でいうと、偽善を行うに露悪をもってする。まだわからないだろうな。ちと説明し方が悪いようだ。――昔の偽善家はね、なんでも人によく思われたいが先に立つんでしょう。ところがその反対で、人の感触を害するために、わざわざ偽善をやる。横から見ても縦から見ても、相手には偽善しか思われないようにしむけてゆく。相手はむろんいやな心持ちがする。そこで本人の目的は達せられる。偽善偽善そのままで先方に通用させようとする正直なところが露悪家の特色で、しかも表面上の行為言語あくまでも善に違いないから、――そら、二位一体というようなことになる。この方法を巧妙に用いる者が近来だいぶふえてきたようだ。きわめて神経の鋭敏になった文明人種が、もっと優美に露悪家になろうとすると、これがいちばんいい方法になる。血を出さなければ人が殺せないというのはずいぶん野蛮な話だからな君、だんだん流行らなくなる」  広田先生の話し方は、ちょうど案内者が古戦場説明するようなもので、実際を遠くからながめた地位にみずからを置いている。それがすこぶる楽天の趣がある。あたか教場講義を聞くと一般の感を起こさせる。しか三四郎にはこたえた。念頭に美禰子という女があって、この理論をすぐ適用できるからである三四郎は頭の中にこの標準を置いて、美禰子のすべてを測ってみた。しかし測り切れないところがたいへんある。先生は口を閉じて、例のごとく鼻から哲学の煙を吐き始めた。  ところへ玄関足音がした。案内も乞わず廊下伝いにはいって来る。たちまち与次郎書斎入口にすわって、 「原口さんがおいでになりました」と言う。ただ今帰りましたという挨拶を省いている。わざと省いたのかもしれない。三四郎にはぞんざいな目礼をしたばかりですぐに出ていった。  与次郎と敷居ぎわですれ違って、原口さんがはいって来た。原口さんはフランス式の髭をはやして、頭を五分刈にした、脂肪の多い男である。野々宮さんより年が二つ三つ上に見える。広田先生よりずっときれいな和服を着ている。 「やあ、しばらく。今まで佐々木が家へ来ていてね。いっしょに飯を食ったり何かして――それから、とうとう引っ張り出されて……」とだいぶ楽天的な口調であるそばにいるとしぜん陽気になるような声を出す。三四郎原口という名前を聞いた時から、おおかたあの画工だろうと思っていた。それにしても与次郎交際家だ。たいていな先輩とはみんな知合いになっているからえらいと感心して堅くなった。三四郎は年長者の前へ出ると堅くなる。九州流の教育を受けた結果だと自分では解釈している。  やがて主人が原口に紹介してくれる。三四郎は丁寧に頭を下げた。向こうは軽く会釈した。三四郎それから黙って二人の談話を承っていた。  原口さんはまず用談から片づけると言って、近いうちに会をするから出てくれと頼んでいる。会員と名のつくほどのりっぱなものはこしらえないつもりだが、通知を出すものは、文学者とか芸術家とか、大学教授とか、わずかな人数にかぎっておくからさしつかえはない。しかもたいてい知り合いのあいだだから形式はまったく不必要である目的はただおおぜい寄って晩餐を食う。それから文芸有益談話を交換する。そんなものである。  広田先生一口「出よう」と言った。用事はそれで済んでしまった。用事はそれで済んでしまったが、それから後の原口さんと広田先生の会話がすこぶるおもしろかった。  広田先生が「君近ごろ何をしているかね」と原口さんに聞くと、原口さんがこんな事を言う。 「やっぱり一中節稽古している。もう五つほど上げた。花紅葉吉原八景だの、小稲半兵衛唐崎心中だのってなかなかおもしろいのがあるよ。君も少しやってみないかもっともありゃ、あまり大きな声を出しちゃいけないんだってね。本来四畳半の座敷にかぎったものだそうだ。ところがぼくがこのとおり大きな声だろう。それに節回しがあれでなかなか込み入っているんで、どうしてもうまくいかん。こんだ一つやるから聞いてくれたまえ」  広田先生は笑っていた。すると原口さんは続きをこういうふうに述べた。 「それでもぼくはまだいいんだが、里見恭助ときたら、まるで形無しだからね。どういうものかしらん。妹はあんなに器用だのに。このあいだはとうとう降参して、もう歌はやめる、その代り何か楽器を習おうと言いだしたところが、馬鹿囃子をお習いなさらいかと勧めた者があってね。大笑いさ」 「そりゃ本当かい」 「本当とも。現に里見がぼくに、君がやるならやってもいいと言ったくらいだもの。あれで馬鹿囃子には八通り囃し方があるんだそうだ」 「君、やっちゃどうだ。あれなら普通人間にでもできそうだ」 「いや馬鹿囃子はいやだ。それよりか鼓が打ってみたくってね。なぜだか鼓の音を聞いていると、まったく二十世紀の気がしなくなるからいい。どうして今の世にああ間が抜けていられるだろうと思うと、それだけでたいへんな薬になる。いくらぼくがのん気でも、鼓の音のような絵はとてもかけないから」 「かこうともしないんじゃないか」 「かけないんだもの。今の東京にいる者に悠揚な絵ができるものか。もっとも絵にもかぎるまいけれども。――絵といえば、このあい大学運動会へ行って、里見と野々宮さんの妹のカリカチュアーをかいてやろうと思ったら、とうとう逃げられてしまった。こんだ一つ本当の肖像画をかい展覧会にでも出そうかと思って」 「だれの」 「里見の妹の。どうも普通日本の女の顔は歌麿式や何かばかりで、西洋の画布にはうつりが悪くっていけないが、あの女や野々宮さんはいい。両方ともに絵になる。あの女が団扇をかざして、木立をうしろに、明るい方を向いているところを等身に写してみようかしらと思っている。西洋の扇は厭味でいけないが、日本団扇は新しくっておもしろいだろう。とにかくはやくしないとだめだ。いまに嫁にでもいかれようものなら、そうこっちの自由いかなくなるかもしれないから」  三四郎は多大な興味をもって原口の話を聞いていた。ことに美禰子が団扇をかざしている構図は非常な感動を三四郎に与えた。不思議因縁が二人の間に存在しているのではないかと思うほどであった。すると広田先生が、「そんな図はそうおもしろいこともないじゃないか」と無遠慮な事を言いだした。 「でも当人希望なんだもの団扇をかざしているところは、どうでしょうと言うから、すこぶる妙でしょうと言って承知したのさ。なに、悪い図どりではないよ。かきようにもよるが」 「あんまり美しくかくと、結婚の申込みが多くなって困るぜ」 「ハハハじゃ中ぐらいにかいておこう。結婚といえば、あの女も、もう嫁にゆく時期だね。どうだろう、どこかいい口はないだろうか。里見にも頼まれているんだが」 「君もらっちゃどうだ」 「ぼくか。ぼくでよければもらうが、どうもあの女には信用がなくってね」 「なぜ」 「原口さんは洋行する時にはたいへんな気込みで、わざわざ鰹節を買い込んで、これでパリー下宿に籠城するなんて大いばりだったが、パリーへ着くやいなや、たちまち豹変したそうですねって笑うんだから始末がわるい。おおかた兄からでも聞いたんだろう」 「あの女は自分の行きたい所でなくっちゃ行きっこない。勧めたってだめだ。好きな人があるまで独身で置くがいい」 「まったく西洋流だね。もっともこれからの女はみんなそうなるんだから、それもよかろう」  それから二人の間に長い絵画談があった。三四郎広田先生西洋の画工の名をたくさん知っているのに驚いた。帰るとき勝手口で下駄を捜していると、先生梯子段の下へ来て「おい佐々木ちょっと降りて来い」と言っていた。  戸外は寒い。空は高く晴れて、どこから露が降るかと思うくらいである。手が着物にさわると、さわった所だけがひやりとする。人通りの少ない小路を二、三度折れたり曲がったりしてゆくうちに、突然辻占屋に会った。大きな丸い提灯をつけて、腰から下をまっ赤にしている。三四郎は辻占が買ってみたくなった。しかしあえて買わなかった。杉垣に羽織の肩が触れるほどに、赤い提灯をよけて通した。しばらくして、暗い所をはすに抜けると、追分の通りへ出た。角に

https://anond.hatelabo.jp/20241001205100

2024-08-09

anond:20240809132508

小学生の頃の話だから、いまから30年近く前。

秋になると、お祭りの1か月くらい前から、毎晩お囃子練習がある。

俺はその日、いつもどおり自治会館の畳の上で練習の順番を待っていた。


おそらくバイトを終えたであろう雰囲気女子高生がやってきて、俺の前に立った。

女子高生が前屈運動をするように荷物を置いた時、俺の目の前にデッケーけつ出現。

パンチラというかモロだった。アメリカセンスの悪い洋菓子みたいな、赤や青や黒がグチャっとなったような色のパンツだった。

その女子高生の顔がいまいちだったので、ほとんど覚えていないがこんな感じ。

2024-07-07

2024-05-07

祭りのお囃子グルーヴ

GW大國魂神社お祭り見てきたが、お囃子グルーヴ感すごかった。

ダンスミュージックみたいなものから当たり前なのかね。

祭りのお囃子グルーヴ

GW大國魂神社お祭り見てきたが、お囃子グルーヴ感すごかった。

ダンスミュージックみたいなものから当たり前なのかね。

2023-09-22

囃子が聞こえるとイライラしてしま

こちとら仕事に追われて明日休日出勤確定しとるんじゃ!!!

のんきにお祭りしてんじゃねーよ!!!

2023-07-28

anond:20230727214057

東京文化って基本的には広く浅くみたいな感じ。新しいものがガーっとやってきて、すぐ飽きられて終わり、みたいな。

地方場合、わりとずーっと同じことやってて、たまに異常に尖った人がいたりする。

たとえば、地方に住んでるアーティストワークショップとかずーっとやってて地元の子供はみんな知ってたりするし、伝統的な踊りとかお囃子とかもみんなできたりする。

増田東京の人だから文化グローバルかつ広く浅く新しいものが尖ってるって価値観で、それはそれで悪くない。そういうのは地方にはない。

ローカル文化ってそもそも質が違う。んで、ほんとにすごいものはむしろローカルしかいかも知れない。

シャンパーニュシャンパーニュ地方地酒だし、フィンランド田舎いかないとほんとのサウナってわかんないとも思う。

まあ、日本なんて狭い国で、金さえあれば飛行機とか新幹線ですぐに東京行けるじゃん。どんな田舎でも。

から自分ルーツになる地方文化が体に染み込んでてその上で東京にも何なら海外にも拠点がある、みたい生き方日本においては一番豊かな気がする。

東京の人は地方行かないか地方に住んだら地方だけでどうにかしようとするけど、地方の人は東京とか他地方にわりとフットワーク軽く行くからね。

2023-07-17

anond:20230715182953

anond:20230506172517

俺は28だが、毎年夏になると家の窓に簾、ラムネの旗、風鈴をかけて、木桶にラムネ3本と氷水入れて冷やして、夕方に一人で浴衣着て、家の目の前の畦道に出て、祭囃子BGMを流しながら「自分は今高校生で、お互い初めて同士の初恋彼女と一緒にいる」という設定で線香花火をやりラムネを飲む儀式をしてる

2023-06-01

転勤で田舎に越してきて、年に何回も伝統行事(笑)神事(笑)みたいなことやってて煩い

裸同然の男が神輿担いで、それを生きがいにしてるジジイたち、きもいよ〜

なんでその祭りに出てるだけで偉そうにできるの?

周りのババアたちもすごいわ

朝っぱらから褌と半被だけで街中うろうろすんのやめてほしいよ、不快

祭りって商店街とか神社とかの一日限りのイベントだと思ってた

年中何かしらのお囃子とか準備してて、テレビもそればっか特集してて、気が滅入る

興味がないし生活に入ってこないでほしい

伝統行事を守ることは必要やと思うが、巻き込まないでほしい

これって田舎あるあるなんか?はやく東京戻りてぇ〜

2023-05-07

anond:20230506172517

俺は28だが、毎年夏になると家の窓に簾、ラムネの旗、風鈴をかけて、木桶にラムネ3本と氷水入れて冷やして、夕方に一人で浴衣着て、家の目の前の畦道に出て、祭囃子BGMを流しながら「自分は今高校生で、お互い初めて同士の初恋彼女と一緒にいる」という設定で線香花火をやりラムネを飲む儀式をしてる

流石にキモくてワロタwwww こじらせすぎw

2023-05-06

anond:20230506172517

毎年夏になると家の窓に簾、ラムネの旗、風鈴をかけて、木桶にラムネ3本と氷水入れて冷やして、夕方に一人で浴衣着て、家の目の前の畦道に出て、祭囃子BGMを流しながら線香花火をやりラムネを飲む儀式

祭りの人混みに小さな子供を連れて行くのは抵抗あるけど子供夏祭り雰囲気体験させたいので今年の夏これやる。

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