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事件や紛争の解決を見届ける司法記者は日々、さまざまな裁判に遭遇しています。司法の現場の知られざるエピソードを報告します。

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「野良犬」とパワハラされ自殺 新入社員の心を壊した社長の「指導」

母親のスマートフォンに収められた里実さんの写真=東京都千代田区で2025年9月11日午前10時43分、安元久美子撮影
母親のスマートフォンに収められた里実さんの写真=東京都千代田区で2025年9月11日午前10時43分、安元久美子撮影

 大学を卒業した女性は、心を弾ませて化粧品会社に入社した。しかし、待っていたのは社長からの言葉の暴力だった。

 「人間としてアウト」

 「野良犬」

 「会社をなめるな」

 女性はうつ病となり、自ら命を絶つ。会社はパワーハラスメントを認めて1億5000万円を遺族に支払い、社長は辞任した。

 一人の新入社員の死は「上司の指導」とは何かを問いかける。

望んだ内定だったはずが……

 女性は里実さん(名字は非公開)。2021年4月、化粧品小売り「D-UP(ディー・アップ)」(東京)に入社し、23年10月に25歳で亡くなった。

 D-UPの商品は廉価で若者に人気がある。マスカラはファッション雑誌で「ベストコスメ」に選ばれ、品質にも定評がある。

 「弊社のお薦めの商品でございます。よろしければお手に取ってお試しください」

 おしゃれが好きだった里実さん。D-UPの内定が決まると、買い物先で商品を手に取り、うれしそうに家族にPRした。

 入社後も「こんな仕事を任された」と話すこともあり、充実した社会人生活を送っているように家族には映った。

 しかし、半年ほどたつと口数が減り、スマホを手にしながら横になって涙を流すこともあった。

 先輩から細かな注意を受け「うまくいかない」と母親に打ち明けた。それでも最後は「大丈夫、大丈夫」と繰り返した。

すべてを暴露した録音

 年末、帰宅した里実さんは、母親の前で泣きじゃくった。

 「ごめんね。野良犬って言われちゃった」

 「里実が野良犬ってことは、パパ、ママも野良犬ってことでしょ」

 業務連絡の仕方で先輩とトラブルになったことを巡り、社長から叱責されたという。

 里実さんは母親の助言を受けて面談を録音していた。母親は音声を聞き耳を疑った。

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