トランプ米大統領は21日、ロシアの侵攻を受けるウクライナに提案している和平計画案について、27日までに合意するか否かを回答するよう求めた。米紙ワシントン・ポストは、米側はウクライナが受け入れない場合は米国の支援を失うと圧力をかけていると報道。英紙フィナンシャル・タイムズによると、米政権はウクライナと欧州の当局者に対して「交渉の余地はほとんどない」と伝えたという。
「物事が順調に進んでいれば、延長する傾向があるが、我々は木曜(27日)が適切だと考えている」。トランプ氏は米FOXニュースのラジオ番組で、ウクライナの回答期限についてこう述べ、早急な対応を迫った。27日は米国の感謝祭にあたる。
また、ウクライナが「土地を失っている」とも語り、このまま戦闘が続けばウクライナがさらに領土を失い続けるとの認識もにじませた。
その後、トランプ氏はホワイトハウスで記者団に「我々には平和を得られる方法がある」とし、ゼレンスキー大統領が計画を「承認しなければならないだろう」と強調した。「彼は何かを受け入れなければならない。知っての通り、彼は何も受け入れてこなかった」とした上で、2月の首脳会談でゼレンスキー氏と口論になった際に述べた「あなたには切り札がない」との発言に改めて言及した。
米政治専門メディア「ポリティコ」によると、米高官は、ゼレンスキー氏が汚職問題で苦境にあることから「ウクライナ側は合意を受け入れざるを得ないだろう」との見方を示した。
米側が提案している28項目の計画は、ウクライナ東部2州の割譲やウクライナ軍の大幅縮小、ウクライナが北大西洋条約機構(NATO)に加盟しないと憲法に明記することなどを求めており、ロシア側の要求を色濃く反映している。
一方で、ウクライナに対して、「集団防衛」を規定する北大西洋条約第5条をモデルにした戦闘終結後の「安全の保証」を提供することも提示している。
米国はウクライナに領土などの面で大幅な譲歩を迫ると同時に、ウクライナが求めてきた「安全の保証」を約束することでウクライナから和平計画案への同意を得たい考えとみられる。
ただ、与党・共和党の親ウクライナの連邦議員からも計画案への懸念の声が上がる。ウィッカー上院軍事委員長は21日の声明で「(計画は)深刻な問題があり、平和を実現できるかどうかは極めて疑わしい。ウクライナは、世界で最もひどい戦争犯罪人の一人であるプーチン(露大統領)に領土を明け渡すよう強制されるべきではない」と訴えた。【ワシントン松井聡】
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