改革に背を向け、逃げ切りを図ろうとしているかのようだ。「政治とカネ」の問題に対する高市早苗首相の姿勢である。「厳しく臨む」などと述べるばかりで、行動が伴っていない。
自民党派閥の裏金問題に関与した議員を、党役員や政務三役に登用した。事件の震源となった旧安倍派などの復権も顕著だ。全容が解明されていないにもかかわらず、首相は「丁寧に説明責任を尽くしてきた」と開き直った。
裏金問題に関わりながら選挙の審判すら受けていない側近を、官房副長官に起用した。野党から参院委員会への出席を拒否される異例の事態となっている。
政策をゆがめかねない企業・団体献金の禁止にも否定的だ。自民が重要な資金源として依存しており、「慎重な議論が必要」との立場を崩さない。岸田文雄、石破茂両政権も強く抵抗してきた。
先の通常国会では、立憲民主党や日本維新の会などが献金禁止法案を提出したが、継続審議となっている。
抜本改革が進まない中、国民民主、公明両党は今臨時国会で、規制を強化する新たな法案を提出した。献金自体は容認するものの、受け手を政党本部と都道府県連に限定することが柱となる。
自民は全国7000超の政党支部を抱えており、議員らの不明朗な「財布」となっている。国公案はその資金の流れに一定の制約をかけるもので、透明性も現状より高まる。
根深い政治不信を払拭(ふっしょく)するためには、企業献金を禁止することが不可欠だ。ただ、多党化が進む現状においては、野党を中心に多数派を形成できなければ、いずれの法案も成立させられない。次善の策として、国公案を今国会で実現させる選択肢もあるだろう。
与党となった維新の対応も問われる。従来は献金禁止を訴えていたが、連立相手の自民に配慮して主張を後退させている。
政権維持を優先し、献金の温存に手を貸すようなら、「身を切る改革」の本気度を疑われる。
献金の構造にメスを入れ、旧態依然とした政治のあり方を根本的に改める必要がある。先送りを繰り返し、うやむやに終わらせることは許されない。