トランプ米大統領は21日、今月4日のニューヨーク市長選で初当選した民主党急進左派のゾーラン・マムダニ次期市長とホワイトハウスで初めて会談した。終了後、記者団に「非常に生産的だった」と振り返り、マムダニ氏に協力する意向を示した。2人は対立関係が取りざたされていたが、友好ムードを演出する形となった。
トランプ氏は会談後、マムダニ氏とともに記者団の取材に応じ「想定したよりも多くのことに同意できた」と強調。マムダニ氏を「素晴らしい市長になるだろう」と持ち上げた。会談では生活コストの抑制や犯罪対策などについて協議したという。
マムダニ氏も、昨年の米大統領選では経済的負担の軽減を重視する多くの市民がトランプ氏に投票したと述べ「大統領と協力できることを楽しみにしている」と協調する姿勢をみせた。
ニューヨーク市は民主党の地盤で、州下院議員だったマムダニ氏は6月にあったニューヨーク市長選の党予備選に圧勝した。
トランプ氏は、自らを民主社会主義者と位置付けるマムダニ氏を「狂った共産主義者」と敵視し、マムダニ氏が当選した場合には市に対する連邦資金の凍結や犯罪対策を名目にした州兵派遣の可能性に言及していた。一方のマムダニ氏も、トランプ氏を「独裁者」と呼ぶなどし、政権の不法移民対策やトランスジェンダーの権利制限などを批判。双方が非難の応酬を繰り広げていた。
トランプ氏には、来年の中間選挙に向け、マムダニ氏を「左傾化する民主党」の象徴として描き、無党派層の支持を引き離す狙いがあったとみられる。しかし、4日にあったニューヨーク市長選とバージニア、ニュージャージー両州の知事選では、住民の経済的負担の軽減策を重点的に訴えた民主党の3候補が勝利し、トランプ政権の経済政策に対する有権者の不満が浮き彫りになった。
選挙後、トランプ政権は食品価格を抑制するために多くの農産物や食品に対し、看板政策の関税を大幅に引き下げる方針に転じるなど生活コストに対する取り組みに躍起になっている。マムダニ氏との対立を棚上げしても生活コスト対策への協力をアピールすることが得策だと判断したとみられる。
マムダニ氏も市長選の公約を実現する上では政権の協力が不可欠と認識した模様で、17日には米メディアに対し、自らトランプ氏との会談をホワイトハウスに打診したと明かした上で「大統領に(政策の)改善を訴えたい」と語っていた。マムダニ氏は来年1月1日に市長に就任する予定。【ワシントン金寿英】
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