Apple、苦渋の譲歩 韓国でアプリ外部決済を容認

【シリコンバレー=白石武志、ソウル=細川幸太郎】スマートフォン「iPhone」上のアプリ決済手段を独占してきた米アップルが一部開放に転じる。2021年成立の韓国の法律に従い、同国で提供するサービスで外部決済を容認する意向を11日までに同国政府に伝えた。欧米でも同様の規制が強化されつつあり、アップルの事業転換が広がる可能性がある。
韓国の放送通信委員会が明らかにした。アップルがアプリストア内で他社の決済手段を認めるのは世界で初めて。アップルは今後具体的な修正策を当局と協議する。
アップルはアプリ配信サービス「アップストア」上で売買される有料のアプリやデジタルアイテムについて他社の決済手段を認めていなかった。15~30%徴収する手数料収入は年200億ドル(約2兆3000億円)を超えるとみられる。「アップル税」と呼ばれ、一部のアプリ開発者から批判されていた。
韓国では21年8月にスマホのアプリストアで特定の決済手段を強制することを禁じる法律が成立した。欧米でも規制が強化されつつあり、米国では超党派の議員が21年8月、アップルや米グーグルがアプリ配信サービスで自社の決済システムの利用をアプリ開発者らに強制することを禁じる法案を提出した。
欧州連合(EU)の欧州委員会も20年12月、広範なデジタルサービスを対象とする包括規制案を出した。日本では公正取引委員会がデジタルコンテンツ購入での決済手段制限を調査したほか、アプリ事業者から外部決済を望む声も上がる。

今のところアップルは韓国以外では外部決済を認めない姿勢を崩していない。中小のアプリ開発者に限った手数料の減額措置などにとどまる。ただ規制が広がればアップルも従わざるを得ず、収益の打撃となるのは避けられない。
もっとも、外部決済が導入されてもアプリ事業者の負担軽減につながるかは不透明だ。グーグルは21年12月に韓国で法律に従い外部に決済を開放したが、同時にアプリ事業者にアプリストア利用などの名目で26%の手数料支払いを求め始めた。事業者はグーグルと外部決済事業者の両方に手数料を払うため、負担は当初と変わっていない。韓国の放送通信委員会はグーグルの対応を問題視し、同社と協議している。
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