伊藤匠新王座が誕生 将棋王座戦、藤井聡太前王座は六冠に後退
第73期将棋王座戦(日本経済新聞社主催、東海東京証券特別協賛)の五番勝負第5局が28日、甲府市の常磐ホテルで指され、午後8時34分、97手で先手の挑戦者、伊藤匠叡王(23)が藤井聡太王座(23)を破り、3勝2敗で王座のタイトルを奪取した。伊藤新王座は自身初の二冠となり、藤井前王座は六冠に後退した。
終局後、伊藤新王座は「まだ王座獲得の実感は湧かないが、結果を残せて良かった。フルセットにはなったが最終局も終盤まで難しい将棋が指せたので、充実したシリーズになった」と振り返った。敗れた藤井前王座は「全体を通して終盤で競り負けた。実力が足りなかったということなので、また少しずつ力をつけていくしかない」と語った。
伊藤新王座はタイトル3期獲得により最高段位の九段に昇段した。二冠獲得は歴代3位、九段昇段は歴代4位の年少記録。2023年の王座戦で史上初の八冠独占を果たした藤井前王座がタイトル戦で敗れるのは、24年の叡王戦以来2度目。

将棋界には8つのタイトルがある。近年は藤井前王座の「1強」時代となっていたが、同学年の2人が六冠と二冠で分け合う「2強」時代に入ったといえる。
伊藤新王座は2002年東京都世田谷区生まれ。20年、四段昇段を決めプロ入り。24年に初タイトルの叡王を獲得し、藤井八冠(当時)の全冠独占を崩した。

この日の第5局は振り駒の結果、と金が3枚出て伊藤叡王の先手番に。挑戦者が得意とする「相掛かり」を後手番の藤井王座が受けて立った。序盤早々に伊藤叡王が飛車交換を迫るも、藤井王座は交換を拒否。局面はいったん落ちついたが、まもなく藤井王座が9筋の突き捨てから桂を跳ねて仕掛けた。

戦いが始まってからは両者数手ごとにまとまった時間を使う長考合戦。終盤、伊藤叡王が自陣に迫ると金を無視して過激に攻める順を選び、対する藤井王座も相手の金を取らずに受けに回る。一進一退の攻防が続いたが、最後は王座の攻めを見切った挑戦者が抜け出し、大一番を制した。
新聞解説の飯島栄治八段は「序盤から今までの概念を覆すような手が何度も出てきて、2人で新しい局面を一手一手模索しながら作っているような将棋だった。何より☖8八とを恐れずに一手勝ちを読み切ったのが勝因、伊藤叡王の安定した終盤力が印象に残った。非常にスリリングな、10年に1度の記憶に残る名局だった」と講評した。
〈指し手〉☗2六歩☖8四歩☗2五歩☖8五歩☗7八金☖3二金☗3八銀☖7二銀☗9六歩☖1四歩☗1六歩☖9四歩☗6八玉☖5二玉☗7六歩☖8六歩☗同 歩☖同 飛☗2四歩☖同 歩☗同 飛☖2三歩☗2六飛☖3四歩☗8七歩☖8四飛☗3六歩☖7四歩☗3五歩☖7五歩☗同 歩☖3五歩☗8六飛☖8五歩☗2六飛☖3三桂☗3七銀☖7三桂☗4六銀☖9五歩☗同 歩☖6五桂☗5八金☖9七歩☗同 香☖8六歩☗同 歩☖同 飛☗8七歩☖7六飛☗7七桂☖5七桂成☗同 金☖9六歩☗5四歩☖同 歩☗5三歩☖5一玉☗6六金☖9七歩成☗7六金☖8八と☗8四桂☖7三銀☗8一飛☖7一歩☗7四歩☖8四銀☗同飛成☖4二金☗5二銀☖同金寄☗同歩成☖同 金☗5三歩☖5六桂☗6九玉☖6八香☗同 銀☖7八と☗同 玉☖5三金☗5七銀上☖5九角☗2三飛成☖4五桂☗8一竜☖5七桂成☗同 銀☖7二金☗7三歩成☖6九銀☗8八玉☖9五香☗3三歩☖6八桂成☗6一金まで97手で伊藤叡王の勝ち
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