江戸時代後期の豪囚人船漂着事件に脚光 両国の子孫交流、小説化も

江戸時代後期に英国植民地だったオーストラリアの近海で囚人が英国船を乗っ取り、徳島県に漂着した事件が脚光を浴びている。囚人と、追い払った徳島藩士双方の子孫の交流イベントが徳島で開かれたほか、小説出版の動きも。乗っ取りから200年となる2029年に向け、注目度はさらに高まりそうだ。
1829年8月、英国船「キプロス号」で現在のオーストラリアにあった監獄に護送中だった囚人が反乱して船を乗っ取り、翌30年1月に同県牟岐町に漂着した。海賊たちは4日間停泊した後、幕府の異国船打払令による砲撃に遭い退去した。
こうした縁で同国の映像制作会社「ギャザラーメディア」が今年10月中旬、海賊と藩士の子孫が対面するイベントを徳島市で開催。停泊中に藩士らが水を差し出した当時の様子などを再現した阿波人形浄瑠璃が披露された。

海賊の子孫でカナダから参加したエミリー・オハラさんは「200年近くの時を経て子孫同士で会うことになるとは思ってもみなかった」と感激した様子。藩士の子孫、神戸市の速水裕幸さんは「鎖国政策の時代に生きた先祖は、子孫の交流をどんな気持ちで見ているか聞いてみたい」と思いをはせた。
オーストラリアでは、事件の首謀者ウィリアム・スワロウをモデルにした小説「スワロウ」が出版された。オンラインで購入できる。2029年にはシドニーの国立海洋博物館で、事件に関する日本の古文書や海賊が使った剣などの展示会が予定されており、30年にはニュージーランドやトンガ、香港、日本での巡回展も検討されている。
ギャザラーメディアの波多野亜弥さんは「世界で分断が深まる時代に、漂着事件が日豪の相互理解を深める橋渡しになれば」と期待を込めた。〔共同〕









