東北大、最大エントロピー法(MEM)の性能限界を理論的に解明
【プレスリリース】発表日:2025年11月10日
伝統的手法MEMの性能限界を明らかに
―50年以上用いられてきた信号推定手法の脆弱性を発見―
【発表のポイント】
●自然科学、社会科学で広く用いられる最大エントロピー法(Maximum Entropy Method,MEM)(注1)の性能限界を理論的に解明しました。
●MEMにおいてわずかな仮定の違いが復元精度を急激に崩壊させる「相転移現象」が存在することを初めて明らかにしました。
●信号処理や天文学、計算物理学、量子化学、言語学等に広く応用されてきたMEMの限界を示し、今後のデータ復元技術の設計指針になると期待されます。
【概要】
信号処理の代表的手法である最大エントロピー法(MEM)は、限られたノイズの多い観測から元の信号を再構成するため、地震波解析や天体観測、量子化学計算、言語学や経済学に至るまで広範な分野で利用されてきました。
東北大学大学院情報科学研究科の人見将特任助教(研究)と大関真之教授らの研究グループは、MEMの信号を復元する性能を理論的に解析し、本研究により、MEMは仮定するデフォルトモデル(注2)が実際のデータ分布と少し異なるだけで、復元性能が急激に悪化する場合があることが示されました。これは、物理学で知られる相転移(注3)と同様の現象であり、データ解析における復元結果について信頼性に対する根本的な問いを突きつけます。
さらに、信号復元の新たな手法として近年注目されるL1ノルム最小化(注4)(スパース推定)との復元性能の比較により、従来のMEMが必ずしも最適ではなく、新手法が優れる場合があることも確認しました。これは古典的手法の再検証を理論的に実践し、「新規手法の設計」を系統的に実施する方法論を象徴する成果です。
本研究成果は、2025年10月23日にPhysical Review Researchに掲載されました。
※以下は添付リリースを参照
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添付リリース
https://release.nikkei.co.jp/attach/699237/01_202511101223.pdf
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