プロ野球、ポストシーズンまでの間延び感なくせないか(田尾安志)

米大リーグのスピード感にはつくづく恐れ入る。9月28日に全30球団がレギュラーシーズンの最終戦を終えると、その2日後にはもうポストシーズンが始まった。間断なく野球熱を盛り上げようという、米国球界全体の強い意志が見て取れる。
それと比べると日本のプロ野球はのんびりしている。レギュラーシーズンが終わったのが10月5日で、クライマックスシリーズ(CS)・ファーストステージが開幕したのは6日後の11日。セ・リーグのファーストステージに出たDeNAと巨人はレギュラーシーズンの最終戦が1日だったから、9日も空いた。
これだけ空くと、さすがに間延びした感が否めない。レギュラーシーズンで中止があった場合の予備日を多く取ることでCSまでの空白期間が生じているわけだが、クールダウンが長すぎると熱気に水を差す。日本もメジャーのようにレギュラーシーズンの終わりの日をはっきり決め、そこから遅滞なくポストシーズンが始まる日程編成ができないものか。

レギュラーシーズンを決まった日に終えるには、雨で流れた試合を消化するのにダブルヘッダーが要る。近年の夏の長期化と気温の上昇で1日に2試合をこなすことが難しくなってはいるが、時期を選べばやれないことはないはずだ。
私の現役時代にあった、第1試合と第2試合の対戦相手が異なる変則ダブルヘッダーという手もある。ドーム球場が多くある今は、全て屋外球場だった昔と違って日程消化がしやすい環境でもあり、ダブルヘッダーのハードルはそう高くはないのではないか。
ポストシーズンまで時間が空くことでとりわけ影響を受けるのが野手だ。投手の生きた球を見られない期間が長くなると打撃の感覚が狂う。レギュラーシーズンではまず月曜が休みだが、私の場合、日曜や火曜が雨で中止になって2日空くのは嫌だった。肩を休ませる期間が長ければ長いほどいい投手と違って、野手には長期の休養は必ずしもありがたいものではない。
休みが長いとエネルギーを保つ点でもマイナスになる。短期決戦に向けては、相手チームに勝つこととは別に、個々の選手がなんらかのエネルギーを持つことが大切だろう。
私は西武にいた1986年に広島との日本シリーズに出たが、この年は森祇晶監督との関係がうまくいっておらず、レギュラーシーズンの終盤はめっきり出番が減っていた。そこで、日本シリーズでは「チャンスでもう一回アピールしてやるぞ」という気持ちが湧き上がった。「首脳陣に打てないところを見せたくない」という思いがエネルギーとなり、日本シリーズでは打率3割をマーク。チームは1分け3連敗からの4連勝で日本一に輝いた。

選手の立場からすると、休みが欲しいのはポストシーズン前より、むしろポストシーズン後の方だ。11月から翌年1月までの3カ月間は次のシーズンに向けての勝負の3カ月。ここでいかに体を休め、新たに鍛え直せるかで次のシーズンの出来が決まる。
近年は日本シリーズが第7戦までもつれると11月上旬まで試合をするが、翌年のことを考えるともっと早く終わるのが望ましい。早々にシーズンが終わり秋季練習の時間がたっぷり取れる下位チームと対照的に、日本シリーズに出たチームが翌年への準備期間が短くなるのは仕方ない。それでも、公平性の観点からもできるだけオフの時間を多く取ってあげてほしい。その点でも、ポストシーズン開始までの期間を短くし、シーズン全体の日程が詰まった形にする意義は大きいといえる。
ただ休みを与えるのでなく、どこで休ませるか。選手起用でも日程編成でも大切な要素だろう。
(野球評論家)








