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イスラエル沖ガス 欧州向け生産、中東で火種に

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【カイロ=久門武史】イスラエルが東地中海の新たな天然ガス田で生産を始める構えを示し、海上の境界を争う隣国レバノンとの対立が再燃している。イスラエルはウクライナ危機でロシア産ガスから切り替えを急ぐ欧州へのガス輸出を目指す。これが中東で緊張を高める火種になっている。

イスラエルが近く生産に入るのは北部ハイファ沖のカリシュ・ガス田で、レバノンと係争中の海域付近にある。両国は海上の境界画定に向けた交渉を米国の仲介で続けているが、イスラエル首相府は19日「カリシュからのガス生産はこれらの交渉とは関係なく、できる限り速やかに開始する」と表明した。

レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者ナスララ師は17日、同ガス田での生産開始は「レッドライン(越えてはならない一線)だ」と強くけん制した。イスラエルのガンツ国防相はヒズボラがガス生産設備を攻撃すれば「レバノンは対価を払う」と警告し、威嚇の応酬を重ねている。ヒズボラは7月に同ガス田に向け小型無人機(ドローン)を飛ばし、イスラエル軍が撃墜した経緯がある。

イスラエルが新たなガス田で生産を急ぐのは欧州への輸出のためだ。同国は2000年代後半に東地中海で見つかった天然ガスの生産が本格化し、ウクライナ危機でロシアに代わる新たな供給元としてにわかに注目を集めた。今年6月、液化施設のある隣国エジプトにパイプラインで送り、液化天然ガス(LNG)を欧州連合(EU)に供給することでエジプト、EUと合意した。

イスラエルのラピド首相は今月12日に訪問先のドイツでショルツ首相と会談後「我々は欧州でロシア産ガスを置き換える努力の一端を担う」と強調した。ロシアがウクライナ侵攻前に欧州に送っていたガスの1割をイスラエルが供給できるとの認識を示した。ガス輸出は歳入増だけでなく、欧州と深い関係を築くカードにもなる。

イスラエルとヒズボラは長くさや当てを繰り返しており、今回の確執が直ちに大きな軍事衝突に至るとの見方は多くない。カーネギー中東センター(レバノン)のマハ・ヤヒア所長は取材に「ヒズボラは経済危機で人気を失っており、レバノン政界でイスラエルのガス生産を利用して影響力を盛り返そうとしている」との分析を示した。

イスラエル首相府は「両国の利益にかなう形で海上境界の合意に達することは可能だ」としており、まず境界を画定し衝突を避けるとの観測もある。

カリシュ・ガス田の埋蔵量は操業会社の英エナジーンによると約1.4兆立方フィートで、先行してイスラエル沖で生産しているリバイアサン・タマル両ガス田に比べ1桁少ない。レバノンのアウン大統領は6月、イスラエルによるカリシュ・ガス田の開発を警戒し「係争海域でのいかなる活動も敵対行為とみなす」と述べたが、レバノンは政治の混迷と機能不全が続く。深刻な経済危機に陥り、外貨や電力の不足が市民生活を圧迫している。

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