はてなキーワード: 胃腸とは
当方個人事業主なので健康診断とか10年以上受けて無いんだけど、友人や家族が受けろ受けろと言ってくる。特に胃カメラ大腸カメラは絶対やれと言われるのだけど、今のところそんなに差し迫っての必要姓を感じていない。
持病持ちで最低月一回はかかりつけの内科に通っていて、体調の変化などを毎回報告してるので、医者に胃カメラや大腸カメラ受けた方が良いか?と聞くと「今胃腸の調子悪いの?便は出てるよね?採血して数値も正常だし受ける必要無いと思うよ。それよりも食事のバランスと適度な運動が大事!!」と、とにかく予防に気を付けろとお叱りを受けた。(ちなみに飲酒喫煙などはしないです。)
「まぁどうしてもやりたいなら紹介状書くから言ってね」とも言ってくれるけど、そう言われたら「なら受けなくていいか」となるよね。でも家族には「そんなのおかしい、それヤブ医者なんじゃない?」と言われるのだけど、もう何年も頼って診てもらってる医者なので私は一応信頼している。
もう一つの可能性として色気のない話をするならば、デートには来たのに飯が食えなくて顔色がおかしい場合は、生理で便秘がひどくなっていて発作みたいに痛みが襲ってきていることもある。
うんこ詰まってるからあんまり食えないし、それまでは元気だったのに飯食いだしたら胃腸が動いてめちゃくちゃ痛みが襲ってくるとかある。
その場合は是非婦人科でうんこ出す薬処方してもらいたいもんだが、まあ働いてる女ってのは気軽に受診しないんだよ。
子宮系の病気が見つかるのもなかなか怖いし、月経時以外はわりと元気だしな。
私はうんこの度に気絶しそうなくらい痛くなるまで我慢してて、限界来て受診したら子宮筋腫があって手術したよ。
別に生理以外の時は恋人として問題ない関係性なのだとしたら、普通に、当たり前に心配してあげて。本当に人によるし自分の中でもマシなときと悪い時の波が大きくて分からないんだよ。数分単位で体調が変わる。自分の身体に女も振り回されてんの。付き合うなら、一緒に振り回されてくれ。すまんなあ。
「内臓が壊れた時に体臭が強くなる」主な原因は、内臓が正常に働かなくなることで「分解できなかったニオイ物質(アンモニアや代謝産物など)」が体外に出てきてしまうからです。
内臓疾患や代謝異常が体臭に直結するため、「体臭がひどくなった=身体の中で何かが壊れている可能性がある」というのは医学的にもその通りです。
完璧な月曜日の朝は、僕の胃腸の健康に最適化された、厳選されたシリアルと低温殺菌乳の組み合わせから始まる。
これは僕が毎週月曜日に正確に測定して実行している、科学的に証明された習慣だ。
この厳密なルーティンは、腸内微生物叢の最適なバランスを維持し、したがって、僕の認知機能を最高レベルに保つための、絶対的に不可欠な基盤となっている。
このプロセスを妨げる、僕のルームメイトがキッチンに入ってきた。彼は、僕の緻密な計算に基づいた生活計画において、制御不能な確率的変数だ。
その後、僕の研究室へと向かった。
今日の僕の課題は、タイプIIB超弦理論における、非可換幾何学を用いたDブレーンのダイナミクスを、特に非摂動的な領域で精査することだ。
具体的な目標は、NS5-ブレーンと交差するD3-ブレーンの世界面上の、開弦と閉弦の相互作用によって生成されるホログラフィックなS行列を計算することにある。
これは、AdS/CFT対応の枠組みの中で、特定の超対称ゲージ理論の相図における、非自明な質量ギャップの存在を解明するための、極めて重要なステップだ。
僕はこの一日、6次元スーパーコンフォーマル場理論のコンパクト化における、例外的なゲージ群F4の特異点解消を試み、エキゾチックなCalabi-Yau多様体の内部に存在する、隠された超対称性の破れを探求した。
この研究は、単純な4次元時空という概念を完全に超越した、究極の統一理論を構築するための、僕の生涯をかけた探求の核心だ。
この研究の複雑さは、僕の友人たちが毎週楽しんでいる、低俗な娯楽とは全く次元が違う。
彼らは、今日の新作コミックのプロット、例えば、DCコミックスにおけるバットマンの多元宇宙バージョンがどのようにしてプライムアースに収束するか、といった、僕にとっては子供だましの議論に興じているだろう。
夜になり、僕の友人の部屋を訪れた。
今日の議論のテーマは、最新のテレビゲーム『サイバーパンク2077』における、リフレクションとレイトレーシング技術の実装についてだった。
僕は、そのゲームの視覚的な美麗さが、物理エンジンの根本的な欠陥、特にラグランジアン力学に基づいたオブジェクトの運動法則の不正確さによって、いかに無意味なものになっているかを指摘した。
具体的には、光速に近い速度で移動するオブジェクトの慣性モーメントの描写が、ローレンツ変換を考慮していないという事実が、そのゲームを物理学的に信用できないものにしている。
その後、僕の隣人が、僕の友人とその友人と共に、僕の視覚フィールドに入ってきた。
彼女の存在は、僕の計画された孤独な夜の時間を妨げる可能性があったため、僕は速やかに僕の部屋へと退却した。
夕食を終えた後、僕は僕の部屋で、僕の心を満たす唯一のメディア、すなわち、物理法則に完全に準拠したSFテレビ番組を鑑賞した。
種類によっては30m先の餌もわかるだとかなんだとか。「まあそらあんだけ明確に餌を区別できるならそうだろうな」という感じだ。
https://anond.hatelabo.jp/20250815211751
その日、旦那さんは飲み会で留守にしていた。私は虫かごに霧吹きをしながら変なことを思いついた。
「こいつにオ、オ、オナラしたらどうなるんだろう」
優れた嗅覚が餌を探し当てるのであれば、オナラのにおいもわかるだろうし、逃げるなり餌だと思うなりするかも!今天井に張り付いてるけど、臭くておっこちちゃうかも!などと思って試してみたくなった。30代である。
だ、だ、だ、誰もいないし…ドゥフ…と虫かごに向かってオナラをしてみた。
私のオナラは旦那さんも1回しか聞いたことないプレミアモンだぞこら。
…のに、特に何も変わらんかった。
いやにおいは嗅ぎ分けてるのかもしれないけど、突然壁から落ちたり急いで逃げたりみたいなのもない。普通に動いてるだけ。臭さが足りなかったのだろうか。なんだよつまらん。こんなに恥を晒してオナラこいたのに!?キサマにはガッカリだよ!!
と、向こうは何も悪くないのに悪態をつく。
まあでも自然界にはラフレシアとかもいるし、腐敗臭って案外多くの生物にとって不快臭ではないのかも。ハエとかはむしろ寄ってくるし。私たちヒューマンは腐敗臭に危険を感じないと死んじゃうからそーゆーふうにできてるだけなのかもしれないな。
じゃあ香水とかは嫌なのかなーどうかなーとか思ったけど、そんなことであまりしつこく構っても嫌われそうなので香水のにおいをかがせたりするのはやめた。老体にこたえてもこまるし。オナラは自然の一部だしいいかなって私の中で謎の許容範囲内だったけど。
というか、コイツもむしろときどきはひっそり屁をこいてるのだろうか。
肛門あるし胃腸もあるし、呼吸もしてるし、可能性は十分ある。でも調べてもよくわからなかった。
1年前、まさか自分がカタツムリに向かって屁をこくなんて思ってもいなかったな。
そしてカタツムリ。キサマは一体いつまでいるツムリだ。
学生時代にうつ病やらパニ障やってサークルにも入れなかった自分がフルタイム労働者を続けるために気をつけていることを備忘録的に。
誰かの参考になれば
〇前提
・定刻の電車に乗るルーティンを崩したくないという結構強めの意思がある
正直自分の労働を支えているのは朝型であることが8割だと思っている。
〇体質
・寝不足だと脂汗と動悸と頭痛が止まらない、立ちくらみとかも起こす
・カフェイン弱い
・汗をめちゃめちゃかきやすい
・視力が天気に影響を受ける
・体の体力よりも頭の体力の方が勝っている
・交感神経が優位すぎる、切り替えが下手
・胃腸は強い
・風邪はとてもひきにくい
仕事に支障が出るレベルの不調はしないけど、なんか体調が悪いが多い。
ご飯は抜けないし睡眠も削れないから無理が効かない側なんだなと思う。
交感神経が優位なのは整体受けると言われるし自分でも思う。ひどい時は、夜寝ているつもりでも寝起きの感覚が「考え事から醒めた」感じになる。体も緊張しすぎて、肩こりがすごい時は下を向けなかった。
〇傾向と対策
→低血糖の時とか燃料不足で起こりがち。すぐ食べられる何かを用意しておくorないならもう寝るつもりでちゃんと電気を消す。できれば歯磨きまではなんとか辿り着きたい。
→とにかく朝型の辛いところは、夜更かしをしても朝に目が覚めてしまうところ。睡眠時間がちゃんと取れていても、夜更かしのダメージは修復できない。早く寝る以外に対策はない。夜更かしの際の頭のスペックはかなり低いので作業などは朝の自分を信頼して託すこと。
・交感神経が優位すぎる
→ストレッチをすると自然なあくびが出る。寝れないなら起きて体を伸ばした方がいい。Youtubeは見てもいいけど、海とか森とかライブカメラを推奨(刺激が少ない)。
→ようやく自炊をするようになったけど、栄養貧弱なメニューであることにさっき気づいた。炭水化物さえとっていればエネルギーになると思っていたけど、どうやらビタミンBとかマグネシウムとかも体に大事らしい。これから意識的にとって、様子をみようと思う。単に栄養不足な可能性もある気がする
・運動をしたい
→運動をした週は頭痛がしない。血管の通りが良くなっていい感じがする。したい。頑張りたい。まだ頑張れない(夜は力尽きがちなので)。運動の良いタイミングを見つけたい。
・部屋は綺麗にすべし
→部屋が汚いと運動をするスペースがない(夏場は特にリングフィットアドベンチャー頼み)、食器が片付けられなくて自炊もする気にならない。栄養運動睡眠以前に部屋を綺麗にすることが最優先。筆者は部屋が汚すぎて恋人から別れを切り出されたため、ちゃんと平積みされている片付け本を買って、それを一から実践して人並み程度(全ての物にしまう場所が用意されている)の部屋になることができた
よかったら、朝型人間の運動のタイミングやら、栄養バランスの考え方みたいなのとか、みんなの体質の傾向と対策とか教えて欲しい...。
さっきトイレでびっくりしたんだけど、うんちが真っ黒だったの!
え、なんで!?って焦ったけど、よく考えたら今日の昼過ぎにサイゼリヤでイカスミパスタを食べたんだよね
そうか、イカスミの黒い色がうんちに反映されたんだ!でも、ちょっと待てよ
イカスミパスタを食べてからうんちになるまで、こんなに早いものなの?
気になったから、サイゼで撮ったイカスミパスタの写真の撮影日時を確認してみた
写真は15時50分に撮ったやつで、うんちしたのは22時30分頃
早すぎじゃない!? ネットで調べてみたら、食べたものは通常24~48時間で排泄されるって書いてあった
これって、胃腸がめっちゃ健康だから早く出たのか、それとも何か不調で早く出ちゃったのか…どっちなんだろう?
誰か詳しい人、教えて~!
もしくはデブ
女の1日の摂取カロリーって1700-1800くらいだと思うんだけど正直そのくらいとってると痩せたいなってうっすらずっと思ってるくらいには太ってる
痩せてる女は運動もしていて1300くらいだと思う
でも外食で満足いく量って大体一食1000くらいなんだよな!
山岡家のラーメンは1200するし、チー牛は並で900だし、マックもセットにすると1000超えるし
だからその辺一食でも食べるともうゲームオーバーで調整効かなくて白滝とか食べることになる
もう太ってもいいや〜って思ってる時にしか食べられない
丸亀か富士そばすするしかないけど、なら家で食べるし...になる
サイゼもパスタだけ食べれば600くらいだけど足りなくね?辛味チキンも食べたいよ!
その分男は1日2000以上食べれるからいくらでも調整きくんだよな〜
調べてみたら、結構な速さで傷みが進行するらしい。
「腐敗は胃腸など消化器系の器官から始まります」って、そういう事なのかと改めて知ったわ。
1.死斑が見える
心臓が止まると血液も必然的に流れなくなります。次第に血液は体と地面の接面付近に溜まります。地面付近に溜まった血液が皮膚から透けて見えるものが死斑です。
死後30分程度で現れ、まとまった後に固定されます。
2.死後硬直
死後2時間ほどで関節が動かなくなり、筋肉が固まるのが死後硬直。顎、身体、手足の順で固まっていき、死後10時間ほどで硬直のピークを迎えた後に腐敗します。
3.腐敗
腐敗は胃腸など消化器系の器官から始まります。死後に胃液が正しく機能しなくなり、胃や腸そのものを溶かしてしまうことで起こる現象です。
その後全身の腐敗も進行します。
4.腐敗性水泡や腐敗ガスの発生
腐敗が進行していくと、腐敗性水泡や腐敗ガスが発生します。腐敗ガスの量が増えると死臭と呼ばれる異臭が発生。
参政党が胃瘻やめろとか無茶苦茶な医療政策で煽ってるのでまずは端的に。( https://www.jcp.or.jp/akahata/aik25/2025-07-06/2025070602_04_0.html ただしソースは赤旗だが)
いいたいこと
詳しく解説しよう。
これは実は胃瘻に限らず、なのだが、保険医療というのは患者が希望すれば無制限にできるものではない。
保険が適用される条件というのは、それを実施する事で患者の病気がよくなったり、QOLが向上したりするものや、その可能性があるものに限られる。
だから、胃瘻はQOL向上に有効ではない場合は行われないのだ。そもそも医師から選択肢として提示されない。
もちろん、胃瘻をしたが1年で死んだから、胃瘻は無駄だった、とか結果論はありうるが、そこは色々な状況があるから簡単には判断できない。その場その場で最善を尽くしていくしかないのだ。そして、今でも医療の研究者は、その精度を上げるべく日々統計情報を集めているし、研究を行っている。
また、暴論として「胃瘻をしたが寝たきりから回復しない。あの時点で胃瘻を選択しなかったら栄養が取れずに死んでいたわけで、これは胃瘻による無駄な延命だ」というようなものがあるが、これは単に寝たきりは殺せと言うこことしか言って無いことが分かるだろうか。
治療を放棄すれば人間は簡単に死ぬのである。インフルを拗らせたら点滴をしないだけで人は死ぬ。治療を施せばその後もQOLを維持しつつ暮らせるのにやるなという理由は、俺が役立たずだと思う奴は殺せと言う意味しか無いのだ。
胃瘻はいちど胃瘻医したら外せないもの…と言う誤解は根強くある。これは半分は事実だが、半分は事実ではない。
高齢者などで、点滴などを選択せず、胃瘻にするほうがQOLがよくなる、と言うことで、看取りの医療として胃瘻が選択されることはもちろんある。しかしそれですら全てではない事はあまり知られていない。実はその割合は胃瘻導入の4割を超える。
病気により、長期間口から食事を取れなかった人は、嚥下能力が落ちていることからいきなり食事を戻す事ができなくなることはよくある。そこで、まずは胃瘻を作って胃腸を使い始め、胃瘻を使いながら、徐々に口から食べられるように嚥下トレーニングを進める、ということは当たり前にあるのだ。実はその割合は、ある統計では、胃瘻を作る人の4割を超えるのだ。
恐らく多くの人の感覚よりもずっと多いのではないだろうか?
また、嚥下トレーニングは発達がめざましく、嚥下トレーニング用の食事なども多く販売されるようになってきていて、快復率もあがっている。最終的には胃瘻廃止ということになるが、そこまで行くためのプロセスとして、胃瘻は有効な医療手段なのだ。決して一度作ったら外せないものでも、回復が見込めない場合だけに作るものでもないのだ。
最後に、胃瘻を「延命治療だ」と言うのがそもそも間違っている。
全身状態が悪く余命が1年以内から数ヶ月と言われるような終末医療の対象になるような人や、ほとんど会話が不能なほどの重度の認知症患者に対して、単に胃瘻を施しても延命効果がないことは、日本でも、世界でも何度も研究で示されている。これを曲解して「延命効果が無いのに胃瘻をつくるなんて無駄な延命治療だ」という事を言う人がいるが、これはそもそも胃瘻は延命治療扱いされていないので行われていない。主張からして的外れなのだ。
状態が悪い場合では、QOLが向上する見込みがなければ胃瘻はしない。QOLが向上する見込みがあるなら看取りの医療の一環として胃瘻はする。しかし、延命効果は統計的には無いことを承知の上で行うと言うことである。
これは、欧米で発表された「全身状態が悪い患者に胃瘻を施しても、延命効果は無い」という大規模な解析結果が曲解されたと言う事による。これは元々欧米で、だから胃瘻を作る場合は有効なときだけにしようね、と言う話だったはずだが、何故か北欧信仰と混ざって日本に来てしまい、日本の延命治療批判になってしまった。
ところが、それを受けて厚生労働省の研究チームが胃瘻の実態調査をしたところ、欧米とは状況が違うことが見えてきた。まず、日本の場合は欧米よりも早い段階で胃瘻の導入が決断される事が多いが、その分、胃瘻を中止できる割合もかなり高いという事が見えてきた。患者の予後に有効な場合に胃瘻を導入していたということである。胃瘻をすることが寝たきりの増加を引きおこしている、という批判は実態を反映していなかったのである。
また、同じように全身状態が悪い感化に対して、胃瘻をした場合としない場合の解析が行われようとしたが、そもそも延命だけをねらった胃瘻というものは、日本では当時からほぼ行われていなかったため、データが集まらないという状況も発覚した。
とはいえ、政治案件になっていたため、研究報告としては胃瘻の終了目標率というものが設定された。経口摂取に戻れるように嚥下トレーニングや誤嚥防止に力を入れようと言うことになり、これは現在に至るまで患者のQOL向上に資する形になっているので怪我の功名とも言えるかもしれない。
特に、胃瘻は無駄な延命で作る段階になると死ぬようなものだから、と頑なに拒否する人がいて、医療関係者が説得に苦労するというのはよくある話だそう。家族は承知していても、カリフォルニアから来た娘 ( ※慣用句 ウィキペ参照 ) がそう主張して大暴れみたいなことがおこるらしいので、せめて認識をアップデートしてほしい。
また、政党は、そうやってとっくに否定された古いイメージを今更煽るのはやめてほしい。
あと、費用面からいくと胃瘻は比較的リーズナブルに患者のOQLを向上させる事のできる医療なので、医療費の面からも批判する理由はあんまりないんだよ。胃瘻を拒否って療養型病床をずっと占有するよりは胃瘻を作って自宅で介護受ける方がコストも安いし本人も楽だし、いろいろなことができるし。
「牡丹ぼたんに、……蟻ありか?」
「わかった! 花にむら雲、……」
「月にむら雲だろう」
「そう、そう。花に風。風だ。花のアントは、風」
「まずいなあ、それは浪花節なにわぶしの文句じゃないか。おさとが知れるぜ」
「なおいけない。花のアントはね、……およそこの世で最も花らしくないもの、それをこそ挙げるべきだ」
「ついでに、女のシノニムは?」
「臓物」
「君は、どうも、詩ポエジイを知らんね。それじゃあ、臓物のアントは?」
「牛乳」
「これは、ちょっとうまいな。その調子でもう一つ。恥。オントのアント」
「堀木正雄は?」
この辺から二人だんだん笑えなくなって、焼酎の酔い特有の、あのガラスの破片が頭に充満しているような、陰鬱な気分になって来たのでした。
「生意気言うな。おれはまだお前のように、繩目の恥辱など受けた事が無えんだ」
ぎょっとしました。堀木は内心、自分を、真人間あつかいにしていなかったのだ、自分をただ、死にぞこないの、恥知らずの、阿呆のばけものの、謂いわば「生ける屍しかばね」としか解してくれず、そうして、彼の快楽のために、自分を利用できるところだけは利用する、それっきりの「交友」だったのだ、と思ったら、さすがにいい気持はしませんでしたが、しかしまた、堀木が自分をそのように見ているのも、もっともな話で、自分は昔から、人間の資格の無いみたいな子供だったのだ、やっぱり堀木にさえ軽蔑せられて至当なのかも知れない、と考え直し、
「罪。罪のアントニムは、何だろう。これは、むずかしいぞ」
と何気無さそうな表情を装って、言うのでした。
「法律さ」
堀木が平然とそう答えましたので、自分は堀木の顔を見直しました。近くのビルの明滅するネオンサインの赤い光を受けて、堀木の顔は、鬼刑事の如く威厳ありげに見えました。自分は、つくづく呆あきれかえり、
「罪ってのは、君、そんなものじゃないだろう」
罪の対義語が、法律とは! しかし、世間の人たちは、みんなそれくらいに簡単に考えて、澄まして暮しているのかも知れません。刑事のいないところにこそ罪がうごめいている、と。
「それじゃあ、なんだい、神か? お前には、どこかヤソ坊主くさいところがあるからな。いや味だぜ」
「まあそんなに、軽く片づけるなよ。も少し、二人で考えて見よう。これはでも、面白いテーマじゃないか。このテーマに対する答一つで、そのひとの全部がわかるような気がするのだ」
「まさか。……罪のアントは、善さ。善良なる市民。つまり、おれみたいなものさ」
「冗談は、よそうよ。しかし、善は悪のアントだ。罪のアントではない」
「悪と罪とは違うのかい?」
「違う、と思う。善悪の概念は人間が作ったものだ。人間が勝手に作った道徳の言葉だ」
「うるせえなあ。それじゃ、やっぱり、神だろう。神、神。なんでも、神にして置けば間違いない。腹がへったなあ」
「いま、したでヨシ子がそら豆を煮ている」
「ありがてえ。好物だ」
両手を頭のうしろに組んで、仰向あおむけにごろりと寝ました。
「そりゃそうさ、お前のように、罪人では無いんだから。おれは道楽はしても、女を死なせたり、女から金を巻き上げたりなんかはしねえよ」
死なせたのではない、巻き上げたのではない、と心の何処どこかで幽かな、けれども必死の抗議の声が起っても、しかし、また、いや自分が悪いのだとすぐに思いかえしてしまうこの習癖。
自分には、どうしても、正面切っての議論が出来ません。焼酎の陰鬱な酔いのために刻一刻、気持が険しくなって来るのを懸命に抑えて、ほとんど独りごとのようにして言いました。
「しかし、牢屋ろうやにいれられる事だけが罪じゃないんだ。罪のアントがわかれば、罪の実体もつかめるような気がするんだけど、……神、……救い、……愛、……光、……しかし、神にはサタンというアントがあるし、救いのアントは苦悩だろうし、愛には憎しみ、光には闇というアントがあり、善には悪、罪と祈り、罪と悔い、罪と告白、罪と、……嗚呼ああ、みんなシノニムだ、罪の対語は何だ」
「ツミの対語は、ミツさ。蜜みつの如く甘しだ。腹がへったなあ。何か食うものを持って来いよ」
「君が持って来たらいいじゃないか!」
ほとんど生れてはじめてと言っていいくらいの、烈しい怒りの声が出ました。
「ようし、それじゃ、したへ行って、ヨシちゃんと二人で罪を犯して来よう。議論より実地検分。罪のアントは、蜜豆、いや、そら豆か」
「罪と空腹、空腹とそら豆、いや、これはシノニムか」
罪と罰。ドストイエフスキイ。ちらとそれが、頭脳の片隅をかすめて通り、はっと思いました。もしも、あのドスト氏が、罪と罰をシノニムと考えず、アントニムとして置き並べたものとしたら? 罪と罰、絶対に相通ぜざるもの、氷炭相容あいいれざるもの。罪と罰をアントとして考えたドストの青みどろ、腐った池、乱麻の奥底の、……ああ、わかりかけた、いや、まだ、……などと頭脳に走馬燈がくるくる廻っていた時に、
「おい! とんだ、そら豆だ。来い!」
堀木の声も顔色も変っています。堀木は、たったいまふらふら起きてしたへ行った、かと思うとまた引返して来たのです。
「なんだ」
異様に殺気立ち、ふたり、屋上から二階へ降り、二階から、さらに階下の自分の部屋へ降りる階段の中途で堀木は立ち止り、
「見ろ!」
自分の部屋の上の小窓があいていて、そこから部屋の中が見えます。電気がついたままで、二匹の動物がいました。
自分は、ぐらぐら目まいしながら、これもまた人間の姿だ、これもまた人間の姿だ、おどろく事は無い、など劇はげしい呼吸と共に胸の中で呟つぶやき、ヨシ子を助ける事も忘れ、階段に立ちつくしていました。
堀木は、大きい咳せきばらいをしました。自分は、ひとり逃げるようにまた屋上に駈け上り、寝ころび、雨を含んだ夏の夜空を仰ぎ、そのとき自分を襲った感情は、怒りでも無く、嫌悪でも無く、また、悲しみでも無く、もの凄すさまじい恐怖でした。それも、墓地の幽霊などに対する恐怖ではなく、神社の杉木立で白衣の御神体に逢った時に感ずるかも知れないような、四の五の言わさぬ古代の荒々しい恐怖感でした。自分の若白髪は、その夜からはじまり、いよいよ、すべてに自信を失い、いよいよ、ひとを底知れず疑い、この世の営みに対する一さいの期待、よろこび、共鳴などから永遠にはなれるようになりました。実に、それは自分の生涯に於いて、決定的な事件でした。自分は、まっこうから眉間みけんを割られ、そうしてそれ以来その傷は、どんな人間にでも接近する毎に痛むのでした。
「同情はするが、しかし、お前もこれで、少しは思い知ったろう。もう、おれは、二度とここへは来ないよ。まるで、地獄だ。……でも、ヨシちゃんは、ゆるしてやれ。お前だって、どうせ、ろくな奴じゃないんだから。失敬するぜ」
気まずい場所に、永くとどまっているほど間まの抜けた堀木ではありませんでした。
自分は起き上って、ひとりで焼酎を飲み、それから、おいおい声を放って泣きました。いくらでも、いくらでも泣けるのでした。
いつのまにか、背後に、ヨシ子が、そら豆を山盛りにしたお皿を持ってぼんやり立っていました。
「なんにも、しないからって言って、……」
「いい。何も言うな。お前は、ひとを疑う事を知らなかったんだ。お坐り。豆を食べよう」
並んで坐って豆を食べました。嗚呼、信頼は罪なりや? 相手の男は、自分に漫画をかかせては、わずかなお金をもったい振って置いて行く三十歳前後の無学な小男の商人なのでした。
さすがにその商人は、その後やっては来ませんでしたが、自分には、どうしてだか、その商人に対する憎悪よりも、さいしょに見つけたすぐその時に大きい咳ばらいも何もせず、そのまま自分に知らせにまた屋上に引返して来た堀木に対する憎しみと怒りが、眠られぬ夜などにむらむら起って呻うめきました。
ゆるすも、ゆるさぬもありません。ヨシ子は信頼の天才なのです。ひとを疑う事を知らなかったのです。しかし、それゆえの悲惨。
神に問う。信頼は罪なりや。
ヨシ子が汚されたという事よりも、ヨシ子の信頼が汚されたという事が、自分にとってそののち永く、生きておられないほどの苦悩の種になりました。自分のような、いやらしくおどおどして、ひとの顔いろばかり伺い、人を信じる能力が、ひび割れてしまっているものにとって、ヨシ子の無垢むくの信頼心は、それこそ青葉の滝のようにすがすがしく思われていたのです。それが一夜で、黄色い汚水に変ってしまいました。見よ、ヨシ子は、その夜から自分の一顰いっぴん一笑にさえ気を遣うようになりました。
「おい」
と呼ぶと、ぴくっとして、もう眼のやり場に困っている様子です。どんなに自分が笑わせようとして、お道化を言っても、おろおろし、びくびくし、やたらに自分に敬語を遣うようになりました。
自分は、人妻の犯された物語の本を、いろいろ捜して読んでみました。けれども、ヨシ子ほど悲惨な犯され方をしている女は、ひとりも無いと思いました。どだい、これは、てんで物語にも何もなりません。あの小男の商人と、ヨシ子とのあいだに、少しでも恋に似た感情でもあったなら、自分の気持もかえってたすかるかも知れませんが、ただ、夏の一夜、ヨシ子が信頼して、そうして、それっきり、しかもそのために自分の眉間は、まっこうから割られ声が嗄れて若白髪がはじまり、ヨシ子は一生おろおろしなければならなくなったのです。たいていの物語は、その妻の「行為」を夫が許すかどうか、そこに重点を置いていたようでしたが、それは自分にとっては、そんなに苦しい大問題では無いように思われました。許す、許さぬ、そのような権利を留保している夫こそ幸いなる哉かな、とても許す事が出来ぬと思ったなら、何もそんなに大騒ぎせずとも、さっさと妻を離縁して、新しい妻を迎えたらどうだろう、それが出来なかったら、所謂いわゆる「許して」我慢するさ、いずれにしても夫の気持一つで四方八方がまるく収るだろうに、という気さえするのでした。つまり、そのような事件は、たしかに夫にとって大いなるショックであっても、しかし、それは「ショック」であって、いつまでも尽きること無く打ち返し打ち寄せる波と違い、権利のある夫の怒りでもってどうにでも処理できるトラブルのように自分には思われたのでした。けれども、自分たちの場合、夫に何の権利も無く、考えると何もかも自分がわるいような気がして来て、怒るどころか、おこごと一つも言えず、また、その妻は、その所有している稀まれな美質に依って犯されたのです。しかも、その美質は、夫のかねてあこがれの、無垢の信頼心というたまらなく可憐かれんなものなのでした。
無垢の信頼心は、罪なりや。
唯一のたのみの美質にさえ、疑惑を抱き、自分は、もはや何もかも、わけがわからなくなり、おもむくところは、ただアルコールだけになりました。自分の顔の表情は極度にいやしくなり、朝から焼酎を飲み、歯がぼろぼろに欠けて、漫画もほとんど猥画わいがに近いものを画くようになりました。いいえ、はっきり言います。自分はその頃から、春画のコピイをして密売しました。焼酎を買うお金がほしかったのです。いつも自分から視線をはずしておろおろしているヨシ子を見ると、こいつは全く警戒を知らぬ女だったから、あの商人といちどだけでは無かったのではなかろうか、また、堀木は? いや、或いは自分の知らない人とも? と疑惑は疑惑を生み、さりとて思い切ってそれを問い正す勇気も無く、れいの不安と恐怖にのたうち廻る思いで、ただ焼酎を飲んで酔っては、わずかに卑屈な誘導訊問じんもんみたいなものをおっかなびっくり試み、内心おろかしく一喜一憂し、うわべは、やたらにお道化て、そうして、それから、ヨシ子にいまわしい地獄の愛撫あいぶを加え、泥のように眠りこけるのでした。
その年の暮、自分は夜おそく泥酔して帰宅し、砂糖水を飲みたく、ヨシ子は眠っているようでしたから、自分でお勝手に行き砂糖壺を捜し出し、ふたを開けてみたら砂糖は何もはいってなくて、黒く細長い紙の小箱がはいっていました。何気なく手に取り、その箱にはられてあるレッテルを見て愕然がくぜんとしました。そのレッテルは、爪で半分以上も掻かきはがされていましたが、洋字の部分が残っていて、それにはっきり書かれていました。DIAL。
ジアール。自分はその頃もっぱら焼酎で、催眠剤を用いてはいませんでしたが、しかし、不眠は自分の持病のようなものでしたから、たいていの催眠剤にはお馴染なじみでした。ジアールのこの箱一つは、たしかに致死量以上の筈でした。まだ箱の封を切ってはいませんでしたが、しかし、いつかは、やる気でこんなところに、しかもレッテルを掻きはがしたりなどして隠していたのに違いありません。可哀想に、あの子にはレッテルの洋字が読めないので、爪で半分掻きはがして、これで大丈夫と思っていたのでしょう。(お前に罪は無い)
自分は、音を立てないようにそっとコップに水を満たし、それから、ゆっくり箱の封を切って、全部、一気に口の中にほうり、コップの水を落ちついて飲みほし、電燈を消してそのまま寝ました。
三昼夜、自分は死んだようになっていたそうです。医者は過失と見なして、警察にとどけるのを猶予してくれたそうです。覚醒かくせいしかけて、一ばんさきに呟いたうわごとは、うちへ帰る、という言葉だったそうです。うちとは、どこの事を差して言ったのか、当の自分にも、よくわかりませんが、とにかく、そう言って、ひどく泣いたそうです。
次第に霧がはれて、見ると、枕元にヒラメが、ひどく不機嫌な顔をして坐っていました。
「このまえも、年の暮の事でしてね、お互いもう、目が廻るくらいいそがしいのに、いつも、年の暮をねらって、こんな事をやられたひには、こっちの命がたまらない」
ヒラメの話の聞き手になっているのは、京橋のバアのマダムでした。
「マダム」
と自分は呼びました。
「うん、何? 気がついた?」
マダムは笑い顔を自分の顔の上にかぶせるようにして言いました。
自分は、ぽろぽろ涙を流し、
「ヨシ子とわかれさせて」
それから自分は、これもまた実に思いがけない滑稽とも阿呆らしいとも、形容に苦しむほどの失言をしました。
「僕は、女のいないところに行くんだ」
うわっはっは、とまず、ヒラメが大声を挙げて笑い、マダムもクスクス笑い出し、自分も涙を流しながら赤面の態ていになり、苦笑しました。
「うん、そのほうがいい」
「女のいないところに行ったほうがよい。女がいると、どうもいけない。女のいないところとは、いい思いつきです」
女のいないところ。しかし、この自分の阿呆くさいうわごとは、のちに到って、非常に陰惨に実現せられました。
ヨシ子は、何か、自分がヨシ子の身代りになって毒を飲んだとでも思い込んでいるらしく、以前よりも尚なおいっそう、自分に対して、おろおろして、自分が何を言っても笑わず、そうしてろくに口もきけないような有様なので、自分もアパートの部屋の中にいるのが、うっとうしく、つい外へ出て、相変らず安い酒をあおる事になるのでした。しかし、あのジアールの一件以来、自分のからだがめっきり痩やせ細って、手足がだるく、漫画の仕事も怠けがちになり、ヒラメがあの時、見舞いとして置いて行ったお金(ヒラメはそれを、渋田の志です、と言っていかにもご自身から出たお金のようにして差出しましたが、これも故郷の兄たちからのお金のようでした。自分もその頃には、ヒラメの家から逃げ出したあの時とちがって、ヒラメのそんなもったい振った芝居を、おぼろげながら見抜く事が出来るようになっていましたので、こちらもずるく、全く気づかぬ振りをして、神妙にそのお金のお礼をヒラメに向って申し上げたのでしたが、しかし、ヒラメたちが、なぜ、そんなややこしいカラクリをやらかすのか、わかるような、わからないような、どうしても自分には、へんな気がしてなりませんでした)そのお金で、思い切ってひとりで南伊豆の温泉に行ってみたりなどしましたが、とてもそんな悠長な温泉めぐりなど出来る柄がらではなく、ヨシ子を思えば侘わびしさ限りなく、宿の部屋から山を眺めるなどの落ちついた心境には甚だ遠く、ドテラにも着換えず、お湯にもはいらず、外へ飛び出しては薄汚い茶店みたいなところに飛び込んで、焼酎を、それこそ浴びるほど飲んで、からだ具合いを一そう悪くして帰京しただけの事でした。
東京に大雪の降った夜でした。自分は酔って銀座裏を、ここはお国を何百里、ここはお国を何百里、と小声で繰り返し繰り返し呟くように歌いながら、なおも降りつもる雪を靴先で蹴散けちらして歩いて、突然、吐きました。それは自分の最初の喀血かっけつでした。雪の上に、大きい日の丸の旗が出来ました。自分は、しばらくしゃがんで、それから、よごれていない個所の雪を両手で掬すくい取って、顔を洗いながら泣きました。
こうこは、どうこの細道じゃ?
こうこは、どうこの細道じゃ?
哀れな童女の歌声が、幻聴のように、かすかに遠くから聞えます。不幸。この世には、さまざまの不幸な人が、いや、不幸な人ばかり、と言っても過言ではないでしょうが、しかし、その人たちの不幸は、所謂世間に対して堂々と抗議が出来、また「世間」もその人たちの抗議を容易に理解し同情します。しかし、自分の不幸は、すべて自分の罪悪からなので、誰にも抗議の仕様が無いし、また口ごもりながら一言でも抗議めいた事を言いかけると、ヒラメならずとも世間の人たち全部、よくもまあそんな口がきけたものだと呆あきれかえるに違いないし、自分はいったい俗にいう「わがままもの」なのか、またはその反対に、気が弱すぎるのか、自分でもわけがわからないけれども、とにかく罪悪のかたまりらしいので、どこまでも自おのずからどんどん不幸になるばかりで、防ぎ止める具体策など無いのです。
自分は立って、取り敢えず何か適当な薬をと思い、近くの薬屋にはいって、そこの奥さんと顔を見合せ、瞬間、奥さんは、フラッシュを浴びたみたいに首をあげ眼を見はり、棒立ちになりました。しかし、その見はった眼には、驚愕の色も嫌悪の色も無く、ほとんど救いを求めるような、慕うような色があらわれているのでした。ああ、このひとも、きっと不幸な人なのだ、不幸な人は、ひとの不幸にも敏感なものなのだから、と思った時、ふと、その奥さんが松葉杖まつばづえをついて危かしく立っているのに気がつきました。駈け寄りたい思いを抑えて、なおもその奥さんと顔を見合せているうちに涙が出て来ました。すると、奥さんの大きい眼からも、涙がぽろぽろとあふれて出ました。
それっきり、一言も口をきかずに、自分はその薬屋から出て、よろめいてアパートに帰り、ヨシ子に塩水を作らせて飲み、黙って寝て、翌る日も、風邪気味だと嘘をついて一日一ぱい寝て、夜、自分の秘密の喀血がどうにも不安でたまらず、起きて、あの薬屋に行き、こんどは笑いながら、奥さんに、実に素直に今迄のからだ具合いを告白し、相談しました。
「お酒をおよしにならなければ」
自分たちは、肉身のようでした。
「いけません。私の主人も、テーベのくせに、菌を酒で殺すんだなんて言って、酒びたりになって、自分から寿命をちぢめました」
「不安でいけないんです。こわくて、とても、だめなんです」
奥さん(未亡人で、男の子がひとり、それは千葉だかどこだかの医大にはいって、間もなく父と同じ病いにかかり、休学入院中で、家には中風の舅しゅうとが寝ていて、奥さん自身は五歳の折、小児痲痺まひで片方の脚が全然だめなのでした)は、松葉杖をコトコトと突きながら、自分のためにあっちの棚、こっちの引出し、いろいろと薬品を取そろえてくれるのでした。
これは、造血剤。
これは、カルシウムの錠剤。胃腸をこわさないように、ジアスターゼ。
これは、何。これは、何、と五、六種の薬品の説明を愛情こめてしてくれたのですが、しかし、この不幸な奥さんの愛情もまた、自分にとって深すぎました。最後に奥さんが、これは、どうしても、なんとしてもお酒を飲みたくて、たまらなくなった時のお薬、と言って素早く紙に包んだ小箱。
酒よりは、害にならぬと奥さんも言い、自分もそれを信じて、また一つには、酒の酔いもさすがに不潔に感ぜられて来た矢先でもあったし、久し振りにアルコールというサタンからのがれる事